ワンピース
□海軍にて
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おつるさんは優しい。
ガープさんがいてもいなくても、気にかけてお茶に誘ってくれる。
その優しさが、嬉しい。心中くすぐられるように、暖かくなる。
…少し、罪悪感がある。
私は、変えようとしているから。
「ウミ?食べないのかい?」
「あ、はい。食べます」
おつるさんの言葉に、少女はハッとして、手にしていた煎餅にかじりつく。
「ウミはぼんやりだねぇ」
優しく細められた目を見て、ほんの少し子供の頬が染まった。
「ガープの世話は大変だろう?ゆっくりしてお行き」
「そんなに大変じゃあないです」
「そうかい?まぁ遠征も多いからねぇ。それはそれで淋しいんじゃないかい?」
「はぁ、まぁ…」
隣に座っているセンゴクから見ても、微笑ましい光景だ。
おつるさんの部屋で、少女とセンゴクと三人で、お茶をしている。
少し前から海軍本部で暮らしている少女、ウミ。
センゴクの心配をよそに、問題なく生活している。時おり見る大人しい姿は、とてもガープの身内とは思えない。
我が儘など言わずに、きちんと役目を果たしている姿は、なかなか好ましいものだ。
よくぞあのガープにこんな良い孫が出来たものだ。
「ウミはあまり外には遊びに出ないのか?」
「はぁ、あまり」
センゴクが聞けば、少し引き気味に答えられた。
………何となく嫌われている気がする。まぁ、自分が子供に好かれるとは思っていない。
「遊び仲間はいないのか?」
中身は大人だからいなくても困らない、とは知らない。
「特には…」
「まぁここじゃあねぇ。他に子供がいないじゃないか」
「そうだな。同じ年頃の者を集めてみようか」
子供の教育にはよろしくないと、大人二人は目を見合わせる。海兵の家族なら、マリンフォードの街にいる。
「いえ、結構です」
少女は本当に嫌そうな顔をした。
「ガープがいない時はどうしてるんだい?」
「…探検してます」
探検?
「あちこち…本部の中を」
思わず眉間にシワが寄った。
「ダメだ!危ない!」
訓練やら演習やら。
流れ弾にでも当たったらどうする?気づかれずに巨人族にでも踏み潰されたら?そもそも粗暴な者も多い。
「あ、いや、とにかく危ない。何かあってからでは遅い」
張り上げた声に少女がさらに引いたのが見えて、慌てて言い募る。
「ガープとて心配する。危ないマネはするな」
「はぁ…」
体をイスの背もたれにくっつけているウミ。完全に引かれている。
「あの」
少しきつく言い過ぎたかと思い直していると、小さく声がかかった。
「最近は、一人じゃないです」
「おや、誰かついててくれるのかい?なら大丈夫じゃないかね」
ガープが少女の傍に誰か置いたのか?
「勝手について来られるんですが………クザンさんに」
「………」
「最近いつも、気づいたら後をついて来てます」
こちらを伺う少女の目が、何かを物語っている。
「そりゃあ、サボリだね」
いや、何かではない。確実にひとつの事実を語っている。
「…クザンの所へ行ってくる」
センゴクはゆっくりと席を立った。ため息つきで。
「クザァーン!貴様ァ、子供と遊ぶ暇があったら仕事をせんかァッ!!」
「…だ、大仏ー!?ぎゃあぁア〜!!」
その叫び声は、ウミにも聞こえた。