短編
□アカデミーにて6
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その日、私はいつものように、一人ゆっくりとお弁当を食べていた。
「………」
目があった。
ナルトと。
何か気配するな〜と思ったら、ガサガサ音をさせて、茂みからナルト登場。こちらを見た瞬間、固まられた。
………いや、何?
私はいつも通りに、校庭の隅でお昼ご飯を食べていただけだ。
「な、何でもないってばよ!」
何が?
ナルトは持っていた箱を後ろ手に隠すが、今更だ。何となく見覚えのある黒塗りの箱………仕出し屋さんのお弁当箱デスネ。
わたわたきょろきょろ、慌てる子供は大変可愛い。
「べ、別に何にもしてないからな!」
いや、何かしたでしょ?
グゥ〜…と、盛大な音。
お昼だから。
「座ったら?」
「へ?ぉ、おう!」
箱を隠しているつもりのナルト。
あれだ。
弁当泥棒。
イルカ先生が仕出し屋さんに頼んだお弁当、こっそり取って来たんだな。
「…食べたら?」
「えぇッ!?な、何でー」
「イルカ先生の机には、カップラーメンでも置いといたら良いんじゃない?」
何もないのは可哀相だ。先生は大人だから自分で何とかするだろうけど。
きょとんとした感じでこちらを見つめた後、ナルトはニッと笑った。
「わかったってばよ!!」
そのまま素ん晴らしい笑顔で、お弁当を食べ始めた。
「うんめぇー!」
良かったネ。
イルカ先生、少しだけ考えてからナルトに気づいて、探し出すんだろうな。もしかしたら、仕出し屋さんが自分の分をうっかり忘れたとか思うかも。
カップラーメンを置かなければ、完全犯罪の可能性、大…。
「じゃあ、私は教室戻るよ」
食べ終えた私は、早々に立ち上がる。
「あ、待つってばよ!誰にもー」
「言わないよ」
言う友達が、そもそもいない。
個人的には、イルカ先生がちゃんと気づくかどうか、見物だ。
教室に戻る途中で職員室を覗いたら、首を傾げているイルカ先生が見えた。その手には、仕出し屋さんの伝票。
生温い笑顔になってしまった私。すれ違った人にちょっと不審な目を向けられた。
怒鳴られたり殴られたり、嫌われたり。
それがナルトの日常だった。
大人に怒られるのは、慣れている。クラスメイトにだって、嫌そうな顔をされる。
なのに、そいつは弁当を分けてくれた。話し掛けてくれた。悪戯しても、怒らない。
良い奴だけど、変な奴。
「お色気の術!」
怒るイルカ先生を、変化で鼻血まみれにした。
ふと、すぐ近くから視線ーーー
あいつだ。
「なんだってばよ?」
こいつは、怒らない。
怒るはずがない。
「………ナルト」
怒るはずがないのに、その眉間にシワが寄っている。俺ってば、そんなにまずい事したか?
「女の人の裸、見た事あるの?」
「………」
え?
「…ナルト、あんた最低」
サクラちゃんに吐き捨てるように言われた。
「えぇ?ちょ、違う!違うってばよーッ!!」
サクラちゃんどころか、クラスの女子全員に、引かれた。
エェ〜ッ!?
ポンッと肩を叩かれる。
「ナルト、じっくり話し合おう。悪かったよ。そんなところまで気がつかなくて。わかる。わかるぞ?おまえの気持ちは良〜くわかる。おまえも男の子だもんな…でもな、まだ早い!」
鼻血から復活したイルカ先生に捕まった。
職員室に引きずられて行く時、あいつがヘラッと笑うのが見えた。
ヒデェ…。
ひでぇ奴だ。
でもーーー
その日もまた、私はいつものように、一人ゆっくりとお弁当を食べていた。
また何か気配するな〜と思ったら、ナルト。
「………」
この遭遇率は何だ?
まぁ、いいけど。
無視してお弁当に集中してたら、ナルトの方から声をかけてきた。
「な、何でもないからな!」
………お馬鹿。
可愛いが、完全にお馬鹿。
隠しているつもりだろうが、その手には赤やら青やら黄色やら、ペンキの缶。ハケまである。
これから落書きします感、全開だ。
まぁ、私には直接関係ない。
食べ終えるまで、じっと見られた。居心地悪い。今日はお腹すいてないみたいだけど、居心地悪いって。
「…ナルト」
「何だってばよ?」
「後で、自分で消しなさい」
「へ…?」
ハテナマークを飛ばす子供を置いて、教室に戻った。
止めても無駄だろう。
落書きしても消せばいい。自分の後始末は自分でするように。
また、怒らなかった。
それどころか、これからしようとしている事を見透かされ、止めるのではなく、後片付けの注意をされた。
やっぱり、変な奴。
「…消しやすいように描いた方がいいってば???」
思わず独り言。
首を傾げてしまったナルトだが、その後、思い切り落書きした。
***
ヒロイン、ナルトとイルカ先生で遊んでる!?
ナルトの変化の女の子、何を見本にしたのかな?三代目のエロ本とか…?