短編

□錦屋にて
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アホなお話。
オリキャラしか出て来ません。



***



私がまだ、四、五歳の頃。



我が家は呉服屋。
そこそこ繁盛しているようで、世間一般よりは多少裕福だと思う。
これも父のおかげ。まだ父の真実を知らない子供の私は、それなりに父を尊敬していた。

それが、少しずつ崩れていった頃ーーー





珍しく母が留守で、私は普段あまり行かないお店にいた。
一人で家にいても問題ないのだが、一応、小さな子供だ。
カウンターの奥の小部屋で、大人しくお留守番。いい子にしておく。何しろ父は仕事中なのだから、迷惑かけちゃいけない。

それでも、好奇心はある。

あまり知らないお店の様子を、ちらちらと覗いていた。
働く父の姿というのは、新鮮だ。家の中ではどちらかというと情けないというか残念な親父というか…そんな父が、店を取り仕切り、働く姿。

たぶん、この時が父に対する感情のピーク。

急下降するのは、もうすぐ。



………あれ?

何か、妙なものを見つけた。

『忍術割引有ります』

何だ、あの貼紙?





しばらくして帰ってきた母に尋ねた。
「…お父さんの趣味よ」
何とも言えない微妙な笑顔の母を、初めて見たかも。

母は、お店を手伝わない。
近づかない。

あまり良い予感がしなかった。










ある日、お出かけから帰って来たら、中庭が破壊されていた。
大きな松は倒され、その脇にあった大人ほどの大きさの庭石は粉々。

何故!?

父が母に怒られていた。
うふふと、顔を赤くして引き攣った笑顔の母。その前の地べたに正座の父。

………恐ろしい。

一緒に出かけていた兄と、物陰から事態を見守った。

「いや、おまえ、写輪眼だぞ?」
「それで?」
え、写輪眼?うちはさんでも来たの!?
「それでって…そんな貴重なものが見れたら本望じゃないか!」
「それで、こうなったの?」
「いや………流石に写輪眼は見せてくれなくてな」
父はものすごく悲しそうに、かつ悔しそうに言うが、それより目の前の母の空気を読んで欲しい。
「かわりに雷切を見せて貰ったんだ!」
今度は目をきらきらとさせて、嬉しそうな父。あの世が一歩近づいた。
「…それで、庭が壊れたのね」
「あぁ、流石はたけカカシ!もの凄い威力だった!!」
うちはではなく、カカシか。

「………それで、商品も全部タダにしちゃったの?」
「あぁ!店ごと渡してもいいくらいだったッ!!」

父の人生に、悔いなし。

母にビンタされる父を見ながら、忍術割引のなんたるかを知った(子供の前で暴力はいけません)。



従業員のおばちゃんに聞けば、はたけカカシは最初は抵抗したらしい。
それはそうだ。
いきなり必殺技見せてくださいなんて言う一般人、いない。それに応える忍者もいないだろう。
商人の本領発揮ーーー交渉術を駆使したのか?
仕方なく写輪眼ではなく雷切になった感じで、表通りじゃ危ないので、中庭の石破壊。ついでに松も倒れちゃった!
そんな流れだったそうだ。



「ねぇ」
兄の袖を掴んで聞く。
「前にお店で火事があったって、もしかしてー」
「もしかしなくても、アレだ」
どこか遠くを見る兄。
私よりも色んなものを見て来たはず。

父が火遁やら風遁やら知っているのは、職業柄だと思っていた。仕事のおかげで知ったのではない…仕事を利用して知ったのか。





………あまりお店には近づかないようにしよう。



***

どんな交渉かは、謎(←思い付かなかった)。

カカシ先生出すはずだったのに…何処に行ってしまったの!?

 

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