短編

□アカデミーにて5
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地味な奴。

それが、そいつの第一印象。



ただのクラスメイト。
クラスに必ず一人いる、大人しい、地味で真面目な感じの奴。シカマルは、たいした興味もなく、その存在だけを記憶に留めていた。





アカデミーでの昼休憩。
いつも一緒のはずのチョウジが、弁当を置いて姿を消した。
有り得ねぇ。
この世の終わりのような顔をしていたような………見れば、空っぽの弁当箱。食べたのではない。ピカピカに綺麗な弁当箱は、最初から何も入っていなかったと物語っている。

…あいつ、小遣い昨日で全部使ったって言ってたよな。

自分の小遣いで買えるだけのパンを買ってチョウジを探したが、シカマルが見つけたのは、弁当を食べているチョウジ。
そして、その隣でため息まじりに空を眺めている少女。

自分の弁当を人にやるだなんて、相当なお人良しだ。
パンを差し出せば、少しだけ笑顔になった。やっぱり腹減ってんじゃねぇか。

話してみれば、そいつは本当に大人しい、地味な奴。
淡々とした受け答えでも、冷たい印象はない。ふと年寄り臭いと思い、それは自分もだと、苦笑して寝転がった。

地味でお人良しーーーまぁ、良い奴だ。





ある時、イノが少し嬉しそうにその名を出した。
一緒にお茶したとか、友達になったとか。甘いものが好きだとか。
あぁ、だからクリームパンでちょっと笑顔になったのか?

地味で、甘いもんの好きな奴。










アカデミーの移動教室。

煙玉なら逃げる時に使えるな、なんて。ぼんやり思っていたら、ガラスの割れる派手な音。

ナルトだ。

いつもの事だと、シカマルはあくびを一つ。
机に伏せようとして、違和感に気づく。

窓際の一番前。
みんながナルトを見やっている中、一人違うところを見ている人間ーーーサスケだ。

他人と馴れ合わない、寄せ付けない彼が見ているのは、すぐ隣の席の少女。

………何だ?

シカマルの席からは、少女の顔がよく見えない。
サスケは訝しむようにじっと見ているが、少女本人は気づいていないようだ。他と同じくナルトを見ている。

サスケの眉間のシワが、どんどん深くなっていく。

…あの少女に、何かがある?



授業に戻ろうと、少女が前を向く。

見えたのは、わずかに上がった口角のみ。





地味で大人しい、甘いものの好きなお人良し、だ。

その少女の何が、サスケにあんな顔をさせた?

何だ?










………まぁ、いいか。

めんどくせぇ。

もう一度あくびをして、シカマルは今度こそ机に突っ伏した。



***

目撃者シカマル。
めんどくさいので放置。とりあえず良い奴、後は気にしない、みたいな?

 

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