短編

□波の国にて
1ページ/1ページ


「なら、木の葉に来ればいいってばよ!」

その言葉に、一同固まる。





波の国にて、カカシ達はガトーに雇われた抜け忍、桃地再不斬と戦っていた。

そう、戦っていた。
過去形だ。

カカシのもとに、火影様から情報が届いたのは、木登り修業の途中。
子供達には知らせなかった。
再不斬と接触できるのは、向こうから仕掛けてきた時。忍者だからと言って、無駄な戦いをする必要はないーーー話をするチャンスがなければ、そのまま殺す事になる。

霧で覆われた時点で、戦うしかないかと考えた。パックン達忍犬を口寄せした時が、最初で最後のチャンス。
調度、ガトー達一味の気配が近づいていた。
ナルトの異常なチャクラを感じた再不斬の決断は、早かった。



その後、ともにガトーを倒したカカシ達は、タズナの家で休んでいた。
これからどうするかと聞いたナルトの質問に、再不斬はさぁなと答え、白は曖昧に笑うだけ。
そんな二人に、ナルトは満面の笑みで言ったのだ。



木の葉に来ればいい、と。





「ちょ、何言ってんのよ!そんな事出来るワケないでしょ!?」
驚いたサクラが、当然の反応を返す。
「何でだ?」
「馬鹿か。こいつら敵だったんだぞ」
サスケに至っては呆れ顔。
「今は違うってばよ」
「それはそうだけどー」
「ナルト。自分が言ってる意味、わかってるのか?」
「え、意味って…」
カカシの目の鋭さに、ナルトは反論を躊躇する。
「俺達は、抜け忍だ。木の葉にまで霧隠れの連中が攻撃してくるぞ」
「うっ…それは、え〜と」
「ナルト君、その気持ちだけで十分です」
まだまだ世の中を知らないガキだと、再不斬は鼻で笑う。嬉しい気持ちに変わりはないと、白は微笑む。
「でも!このままじゃ二人ともずっと追いかけられるんだろ?また今回みたいな事の繰り返しだってばよ!」
「仕方のない事だ」
「僕は、再不斬さんが一緒ならー」

「…死んだ事にすればいい」

「サスケ!?」
驚いたのは、ナルトも含む全員。
言った本人も、自分の思い付きに口を押さえて驚いている。サスケは少し言いづらそう、かつ少し照れ臭そうに目をそらす。
「あんたら二人、死んだって事になれば、もう追われないだろ」
「…死体処理班が来るヨ」
「う、海に流せばいいわ!」
「サクラまで…」
カカシは、盛大なため息をついた。急に何?このチームワークは?
…サクラは、あれだ。サスケが言ったから援護したんだな。
子供達三人、どうやって諌めよう?
「死体は海に流したって事にして、それから…その刀!それ置いていけば信憑性あるかも?」
サクラの緑色の目が、キョロリとみんなを見渡した後、カカシで止まった。

………お願いされても困る。

「火影のじいちゃんには、俺から言えば大丈夫だってばよ!」

そんな簡単にいく訳ないデショ?



他国の忍、それも抜け忍。
白はともかく、犯罪者である再不斬はそう簡単にはいかない。
木の葉に知らせれば、抹殺されても不思議はない。良くても尋問は避けられない。拷問だって十分あり得る。
受け入れられても、公には出来ない。暗部の中の暗部ーーー闇の中だ。



………暗部、人手不足なんだよネ。

思わず、木の葉の暗部スタイルの二人を想像したカカシ。

いやいや、そんな簡単に出来るわけない。



………簡単じゃないが、絶対に出来ないわけじゃない。



「僕は、再不斬さんと二人なら、どこだって良いんです」
「………本当に?」
微笑みながら言う少年に、カカシは今までよりも真剣な目を向ける。『敵ではない』から『味方になり得るかどうか』へ。
「カカシ?」
その変化に、再不斬が気づく。
「簡単にはいかないヨ?」
「簡単にいった事なんて、ありましたっけ?再不斬さん?」
「…ないな」

簡単に生きれた事など、一度もない。

木の葉に行くのも、逃げ続けるのも、この二人にはたいした違いはないのだ。

ただ、この世で二人きりーーー生きていければいい。



「僕、木の葉の里を見てみたいです」
少年は、まるで友人の家に遊びに行くかのような気軽さで、口にする。
「ナルト君達の育った里を、見てみたいです」
「………いいだろう」

あ〜ぁ、再不斬まで。

勝手にヤッタ〜と喜ぶナルトを横目に、カカシは三代目にどう報告するか、文字通り頭を抱えた。



***

二人が生きてたら、ナルトは何かするだろうな、という希望。さらにサスケとサクラまで。
実際はこんな簡単にいかないですよね。

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ