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カポーン…と湯煙の中、鹿脅しの音が響く。

「いいお湯ね〜」
お美しい裸体を惜し気もなくさらしている紅先生。ドキドキしてしまうので、目をそらす。
「任務の帰りに温泉なんて贅沢だね」
白肌がほんのり色付いているヒナタ。ハァハァしそうなので、やはり目をそらす。
「私達の護衛任務だからネ。一緒なら良いデショ」
「ふふ、そうね」
美女の微笑みが美し過ぎる。
「お店のお手伝いしてくれたし。ゴ褒美ダヨー」
「うん。サエちゃん、ありがとう」
「ドーイタシマシテ」
あぁ、美少女も眩しい。

外の緑に目を向けた。



砂隠れからの帰り道。
山里にある温泉地にてひと休みだ。

女湯にて、ヒナタと紅先生の美しさに、もはや萌えどころではない。マジで変態にならないように、木々やら空やらをぼんやり眺めた(←もうすでに変態)。



男湯では、キバが一人ではしゃいでいるのだろう。さすがに赤丸は入れない。
あれ?シノの蟲は…体内だから問題ない?
まぁ兄がいるから、何かあっても止めるだろう。





のぼせたのか、興奮したのか。お湯から上がってもしばらくクラクラしていた。

あー…、萌え過ぎた。










夕飯も済んで、静かな夜。

庭先で一人のんびり涼んでいれば、声がかかる。
「おや、奇遇じゃなぁ」
いや、その言い方はわざとだ。わざとらし過ぎる。
「そーですネ」
とりあえず、にっこり笑顔でこんにちは。

三代目だ。

「温泉デスカー?」
「うむ。隠居したら湯巡りの旅をと思っておったからのぅ」
ほっほっほっ、とかなんとか。じい様のわざとらしい笑い声の後、しばし沈黙。

「…普通に話せば良いだろう」

ハイ、ソーデスネ。

再不斬さんのツッコミに苦笑い。



ぶらり湯巡りの旅、もとい三代目の各国暗躍の旅。その護衛に再不斬班だ。

人里離れた山中の温泉地。内緒話には持って来い。温泉に行きたかっただけじゃないですヨー?

とりあえず旅館の中に入って落ち着いた。
「あ、くずきり食べたいです。黒蜜で」
お茶処だ。
真面目な話をしようとしてた三代目と再不斬さんにじっと見られたが、気にしない。
「お二人は?」
「わしは抹茶でもいただこうか…」
「俺はいい」



田舎とはいえ、おおらか過ぎやしないか?
旅館の仲居さんは、見るからに怪しい再不斬さんにも動じない。おばちゃん特有の懐の温かさが滲み出ている。



あ、美味しー…。

さっぱりした黒蜜の甘さが何とも言えない。

これから三代目はあちこちで美味いもの巡りかぁ。羨ましいーーーいやいや。暗躍してもらわなきゃ。

「そう言えば…」
抹茶を啜っているじい様の後ろに控えている再不斬さんを見やる。
「どうやって表に?」
ビンゴブックにばっちり載ってる他国の犯罪者を、どうやって木の葉の表舞台に出したのか?
「簡単じゃよ」
にやりと笑うじい様。
悪い顔だ。
悪者の笑みだ。
「新しい水影殿はまだまだ若い娘さんでのぅ。ちょいとつついただけじゃ」



「………」



亀の甲より年の功。

長年火影を勤めてきて色々知ってるクサイ事を、若者相手にちらつかせたのか。まだ里内の落ち着いていない霧隠れにしてみたら、多少の事は見逃したほうが無難だ。

あー…



この人、生きてて良かった。

 
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