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埃っぽい。

風が乾いている。

砂だらけ。

我愛羅のホームグラウンドだ。



私、ただいま砂隠れの里にいます。里抜けじゃあない。行商だ。

「お兄ちゃん、私出かけてくる」
「は?手伝いは?」
「いってきます」
「待てぇッ!」
一般人の兄に捕まるはずがない。出店の準備は兄に任せて、さっさと出かける。

「あら、サエ。どこ行くの?」
「我愛羅の所に」
護衛を依頼したのは紅班。
お店は先生達に任せて、私は好きに動かせてもらう。



心中、ウキウキ。
何せ良い子に会いに行くのだ。

道行く人に場所を尋ねれば、怪訝な顔をされた。
我愛羅の扱いがよくわかる。

まぁ、気にしない。










やはり、大きなお屋敷だ。さすがもと風影のお家。コワ面な門番までいる。

ちょっとドキドキしながら声をかけた。
「すいません。我愛羅君、いますか?遊びに来ました」
「は?」
「へ?」
門番のおっさんが二人、顔を見合わせた。怪しむよりも戸惑っている。
「あのぅ」
「あ、いや、我愛羅様はあいにく留守で」
「じゃあテマリちゃんかカンちゃんで」
「…カ、カンちゃん?」

どうやら衝撃を与えたようだ。わざとだが。そのままビックリして中に案内してくれないかなぁ?

見ず知らずの、それも木の葉の額当て付きの少女。どうしたものか迷っている。



サラッと砂が舞った。



「何をしている?」

振り返れば、我愛羅。
腕組みしている。
眉間にシワが寄っている。
私の存在を訝しんでいる。

「遊びに来た」

へにゃへにゃ笑う。



「………」



どうやら我愛羅にも、少なからず衝撃を与えたようだ。無表情だが。
「うち呉服屋でね?行商で砂隠れに来たの。三人に会いたいなと思って」
「そうか」
「忙しいなら出直す」
「いや、構わない」
「じゃあお邪魔します」
遠慮なく。

いまだ戸惑っている門番二人を放置して、中へ。
扉を開けてくれる我愛羅。何気にレディファーストだ。

「あ、我愛羅」
玄関の段を上がった所で、後ろにいる子を振り返る。
「おかえり。お疲れ様」
一段下にある赤毛をなでなで。



「………」



固まっている。

戸惑っている。

誰かに頭を撫でられるなんて、なかったんだろう。





目線がわずかに揺れている。

何、この子。

可愛い過ぎる!



中忍試験の途中に会った時も、サスケ奪還の時も、我愛羅は素直な良い子だった。
こんなに純粋で可愛い子、他にいない。



…甘やかしてやりてぇ。





「ただいま…」

ちょっと不安げに、目をそらして。慣れない感じで、小さな声で応えてくれた。

おばさん、キュンキュンして死にそうデス。



砂隠れに来て良かった。

 
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