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赤丸、マイスイートハート(←意味不明)。

私の癒しが、通りの向こうから駆け寄って来る。
「アンアンッ」
飛び込んでくる小犬を受け止めーーー受け止められずに、ひっくり返った。

ガツンと頭を打ってしまった。受け身は忘れても、赤丸を抱きしめる事は忘れない。
「クゥ〜ン」
ペロペロ顔を舐められる。
痛みなんてフッ飛びマシタ。

もはや小犬ではない。こうしてたまに見る度に大きくなっていく赤丸。まだまだ大きくなるそうだ。
可愛いものは可愛い。
大きくてもこれはこれで萌えだ。ずっと小さいままでいて欲しいとか思ってゴメン。

「赤丸、久しぶり」
「アンッ」
押し倒されたまま、戯れる。ふさふさの毛がたまらない!



通りのど真ん中だという事を忘れてマシタ。



「おい、せめて端っこによけろよ」
「………ハイ」
キバのツッコミに我に返る。
通行人の皆さんにイタイ視線を向けられている。

ストレスのせいだろうか?赤丸に対して理性が飛ぶ。

「やっぱり赤丸、うちに来ない?」
「…行かねぇよ」
冷静に否定されると、グサッとくる。
キバも随分大人になった。私に突っ込むのに声を荒げない。

「赤丸ぅ〜」
「クゥン」
ラブラブだ。
通りの隅で一人と一匹の世界を作り出す。あぁ、今ビーフジャーキーがない。クソッ、買っておけば良かった!



「赤丸、そろそろ行くぞ」
「アン!」
キバの言葉に従って、赤丸はするりと私の腕から出ていった。
「あ、赤丸!?」
「これから修業なんだ。じゃあな」
キバが冷たい!
反抗期!?
「キバ、ひどい子!」
「おまえなぁ…」
あ、心の声が。

「仕方がない。何故ならサエは赤丸を相当好いている」
あれ、いたの?
二、三歩離れた所にいるシノ。思わず辺りを見渡して、ヒナタと紅先生を探してしまう。
「今日はヒナタはいない。キバと紅先生を尾行している」
え、尾行?
「何やらそわそわしていたので、キバが尾けてみようと言い出した」
…修業じゃなかったのか?
「いや、ほら、これも修業だ!シノ、紅先生行っちまうぞ」

確かに向こうの方に紅先生。
そこのお店で菓子折りを購入した模様。



その隣には、アスマ先生。



あんた達、覗きッ!?

思わず心中でツッコミ。
お年頃だから気になるの?
キバが静かだったのは尾行中だからか。





遠目でもお美しい紅先生。いつにも増して眩しい。
幸せ全開な感じだ。

紅先生、デートだからそわそわしてた?

いやーーー



これは、あれだ。
何か特別な日だ。

麗しい大人の女性の紅先生が、ただのデートでキバ達にわかるくらい落ち着かなくなるなんて、まずない。

菓子折りがあったという事は、つまりーーー



三代目に『息子さんをください』じゃないかッ!?

いや、間違えた。

『お付き合いしてます。認めてください』もしくは『いずれ結婚しようと思ってます。認めてください』だ。たぶん。





「ぐえッ!」
キバの後襟を掴めば、奇声がした。
「何すー」
「キバ、シノ」
女の人生、邪魔させません。
「これ以上進むなら、私、容赦しない」
「は…?」
「サエ、何か知っているのか?」
「付き合ってる男女が二人で菓子折り持って行くって、どういう事がわかる?」
「………あぁ、なるほど」
やや間があって、シノは理解したようだ。
「何だよ?てゆーか服離せ!」
「キバ、今日は引こう。何故なら紅先生は人生において大きな決断をしたようだからだ」
そんな言い方では、キバは混乱するだろう。
しかも確証のない憶測ですが。

てゆーか…



「気づかれてるヨ」
「え!?」

振り返ったキバと紅先生の目が、バッチリあいました。
アスマ先生にはペコリと頭を下げておく。

あれだけ赤丸と騒いで、気づかれない訳がない。

 
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