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日向のお屋敷は、相変わらず立派だ。その立派さを気にせず気軽に門をくぐるのは、もはや日常。
「サエちゃん、いらっしゃい」
微笑んで迎えてくれるヒナタ。癒しだ。
カカシ班になってしまってから、なかなかヒナタに会えない。
ヒナタの時間が許す限りだが、修業の名目で道場に通っている。
「今日もよろしく」
ペコリと一礼。
「こちらこそ」
可愛く見えて、バリバリの近距離体術なヒナタ。日向の道場の片隅で稽古する。
「私なんかでごめんね…もっとちゃんと教えられると良いんだけど」
いいえ、あなたじゃなきゃ駄目デス!
ヒナタ以外の日向の誰かに教わるなんて、恐ろしい。全力で拒否する。
真剣に、真っすぐに丁寧に指導してくれる姿に、萌えーーーいやいや。稽古は真剣デス!
そう、真剣。
柔拳が当たったら、死ぬ。
少しは私も強くならなくてはいけない。
化け物みたいなカカシ班にはついていけなくて良いが、死亡率は下げなければ!ナルトの帰還前に死んだりしたら、笑えない。
「ぁ、ありがとうゴザイマシタ…」
息が切れる。
対するヒナタはまだ余裕。着実に強くなっている。
このままではヒナタが遠くに行ってしまう!頑張れ、私!!
差し出してくれたタオルを受け取る。
あー…癒される。
心中悶えまくっている私に、冷たい視線が向けられた気がした。
ネジだ。
呼んでない。
どっか行け。
「こんにちは」
「あぁ、久しぶりだな」
私は大人。
キレたりしない。
挨拶くらいする。
「稽古なら俺が見ー」
「ヒナタ、甘栗甘に行かない?」
「え、うん。良いけど…」
ヒナタに向き直り、ネジを視界からはずす。何だよ、今の上から目線。
「おいー」
「疲れた時は甘い物だよネ」
「そうだね。あの、ネジ兄さん何か用がー」
「ない。私、何の用もない」
「………」
ヒナタともヒナタのお父さんとも和解したネジ。今や仲良し家族。
クソッ、ヒナタと仲良くしやがって。私は離れ離れなのに!
ヒナタをよろしくって言ったの、私だけど。
八つ当たりですが、何か?
「あぁ、ネジもここにいたのか」
道場に現れたのは日向ヒアシ。
「貰い物の菓子があるんだが、どうだ?」
「それは是非、頂きマス」
日向家に貰われるお菓子だなんて、上等に決まってる。
「ヒナタ、甘栗甘代が浮いたね」
「ぅ、うん」
ちらりとネジ兄さんを気にするヒナタ。そんな仕種も可愛い。
「…おまえは俺が嫌いなのか?」
眉間のシワを深くして、直球ストレートな質問。
フッと笑いが漏れてしまった。
「ヒナタに土下座しやがれ」
「………」
「あの、私そんな…もう気にしてないから」
「死んだ父親にも土下座しとけ。お墓の前で」
ネジなんか弄り倒してやる。
目の前のおっさんの肩をぽんと叩いて、こちらにも。
「あなたも」
「あ、あぁ」
二人揃ってどこぞの墓場で土下座してる姿を想像してしまった。シュールだ。
日向家に対して、一切の遠慮がなくなってしまっている私。
でも誰も何も言わないから、このままだ。
お菓子はとっても美味デシタ!
「墓参りに行くか…」
サエの帰った後、ヒアシが呟く。
「あの、サエちゃん本気で言ったわけじゃないと思うんだけど」
「…あれは一生言われます。サスケのように」
思い出してため息が出てしまったネジ。
「え、サスケ君?」
何があったか知らないヒナタは首を傾げる。
「うちはサスケの事なら少し聞いているが。ネジ、何かあったのか?」
「いえ…」
ヒアシも奈良家での詳細は知らない。
あの『無理矢理追い詰めてありがとうを言わせよう作戦』を思い出し、ネジは遠い目をしてしまった。