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甘栗甘でお団子を購入。
ついでに自分は店内で寛いでいく。

まったりと餡蜜を味わっていたら、見知ったおじさん二人がテーブルの横を通り掛かった。

「あ、どうも」
とりあえず頭をさげる。
「あ、あぁ」
「一人か?」
「はい」
イノイチさんとイビキさん。尋問部コンビだ。

………おっさん二人で甘味屋ってどーよ?

私を見てちょっと動揺したというか良心でも痛んだというか、苦い顔のイノイチさん。
このおっさん、私に一生頭が上がらないな。そう思った途端、強気(←サイテー)。

「何ですか?尋問部はお暇なんデスカ?」
「いや、そういう訳では…」
「俺達だって団子くらい食べる」
イノイチさんの失態を知っているイビキさん。苦笑している。
「尋問部の事って、イビキさんにも責任ありますよネ?あれ、無関係?」
「………いや」
目をそらしやがった。

あれだ。
尋問部は完全に押さえた!みたいな?
ふふふ、こき使ってやる。

「これどうぞ」
ガサッと買っておいた袋を差し出す。
「お団子です。これ持って帰って食べて、ちゃっちゃと仕事してクダサイ」
「いや、しかし」
「嫌ですネェ。大の大人が下忍の女の子に奢られるだなんて。お返しは里に。里のために馬車馬のように働け」

あ、最後に本音が…。

最近どうも口が滑る。
うちは兄弟が仲直りしたから、ちょっと心が軽い。その分口まで軽くなった?

「馬車馬…」
イビキさんの顔が引き攣っている。ホラーだ。でも慣れちゃったから怖くない。
あなたが優しい事は知ってマス。

「………イノから聞いていたのと、随分違うな」
何が?
イノイチさんに首を傾げる。
「物静かでしっかりした大人の雰囲気だと、アカデミーの時に言っていた」
思わず、へらりと笑う。
「平和でしたから」
今も平和だ。

でもこれが、三年後には崩れると、私は知っている。

「娘さん、強くしてくださいネ。あなたなんて軽〜くブチのめせるくらいに」
山中家始まって以来な感じで。
「軽く…」
引っ掛かるのはそこ?
まぁ娘に負けたら、父親としての立場なし。

「それじゃあ、頑張ってください」
もう帰れ。これから三年間、死ぬ気で働け。
私、休んでるケド。

餡蜜を食べながらひらひらと手を振れば、二人は顔を見合わせて、微妙な表情。おっさんが見つめ合っているなんて、ちょっと鳥肌。

軽く息を吐いたイノイチさんが一言。
「必ず、借りは返す」
「里に返してクダサイ」
木の葉を守ってくれれば、我が家も無事だ。

お団子の袋をガサゴソいわせながら、おっさん二人は帰って行った。





そんなやり取りを、奥のテーブルにいたシカクさんにバッチリ聞かれていたなんて、知らない。










「おまえ、完全に負けてるな」
面白いものを見れたと、シカクは笑う。

店を出たはずのイノイチが目の前に。その隣には、団子の袋を持ったイビキ。
餡蜜を食べ終えた少女は、つい先ほど満足そうに微笑みながら店を出た。

「あぁ、何と言うか…面目ない」
自分のミスで少女が命を失いかけたのは事実だと、落ち込んでいる。珍しい姿だ。

「里に返せ、か…」
団子の袋が不似合いなイビキが、ため息混じりに呟く。

何とも言えない言葉だ。

つまり、少女本人には何もしなくて良いと、守るなら自分ではないとーーー里のために、己のために戦えと。

その正体は不明なままでも、木の葉は少女に守られている。



「そう言えば、チョウジがやる気を出したのはあの子のおかげらしい」
チョウザが言っていたのを思い出す。
強くなってと、傷付いた少女に言われた少年は、奮起した。
「知っている…チョウザの奴、嫁候補だとか喜んでたな」
本人がどうかは知らないが、と言うイノイチにシカクはにやりと笑った。
「うちもだ」
「は?」
「シカマルもやる気になってくれてるからなぁ」

あんな子、他にいない。

「………カカシが付き纏っているらしいぞ」

イビキの発言は、甘味屋の客達に聞かれていた。

 
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