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驚きと困惑。

わずかにその目を揺らしながらも、サスケは逃げない。激情に呑まれる事もない。

けれど、小さな子供。
ゆっくりと、注意深く闇を払っていかなければ、すぐに迷う。





「里の大人達は、いろいろ思惑とか利害とかあるけど、ずっとサスケを守ってたんだ」
「………そう、か」
納得はしなくていい。
困惑や憤り、悔しさや哀しさ。そのすべてが正しい。

ただ、忘れないで欲しい。

自分が守られている事を。

自分自身が、とても大切な事を。





「シカマルは?あくまで可能性の話だけど、最悪の場合、何が考えられる?」
考え、と言いながら『正解』を求めてみる。
ずっと渋い顔のままのシカマル。一番関係ないのに、一番すぐに真相に気付ける子だ。

「…事件が起こる前から、知ってた可能性がある」

その言葉に、重い沈黙。

「はじめからうちはを助けるつもりはなかった。むしろ、里には都合が良かった。だから助けなかった。もしかしたらだが」
本当は、里の思惑だったと気付いている言い方だ。
そうでなくては説明がつかないから。

シカマルにとって、大量殺人が里の思惑だったなんて、それを個人に押し付けるだなんて、最悪だ。

「都合が良い?何故!?」
一族を誇る少年には、考えられないだろう。
「うちはは里にとって重要な一族でしょう?どうして?」
サクラも、事件の裏を読むのは難しい。
「共犯がいたって言ったな」
「あぁ。イタチもそう言っていた。いくらあいつでも一人で全部やるのは無理がある」
「その共犯が、里だったら?」
「何ッ!?」
「そんな!」
チッと、舌打ちするシカマル。そんな事は言いたくなかったし、考えたくもなかったはずだ。



サスケが痛みを背負うのに、一人じゃなければいいと思った。
ナルトは旅に出た。
サクラとシカマルを選んだ。

サスケを独りにしないために。

ともに戦えるように。



すべて私の独りよがりだ。



「サエ、答えを言うつもりあんのか?つーか確証は?」
シカマルが苛立っている。
「三代目が連れて来る人が、証人」
苦笑するしかない。
「証人で、最大の被害者だと、私は思ってる」



調度良いタイミングで、奈良家に来訪を告げる声が聞こえた。



「…俺の客だな」
「最悪と向き合う事になるよ」
「最悪でも何でも構わない」

この先を予想だにしてないサスケに、ハッと渇いた笑いが出てしまう。



私が私の罪と向き合う時だ。



「最悪って?」
サクラの目が、純粋に心配だと向けられて、微笑む。
「大丈夫」
サスケは、大丈夫。










ダ ダダッ ーーー



少し慌てた足音が聞こえて、そのままの勢いで部屋の戸が開けられた。

「シ、シシシカマルッ!」
ヨシノさん、慌て過ぎ。
「何だよ?」
「ほ、ほきゃ…火影様が!三代目があんたに…カカシ先生も、あぁあ暗部まで!何で?あんた、何やらかしたのッ!?」
噛みまくりだ。
息子が何かやらかしたなんて、シカマルは信用がないのか?
「ここに通してください。私が呼びました」
「え?え、あ、そうなの?」
もととは言え火影を他所の家に呼び付けた少女。
そんな疑問が浮かぶ暇もなく、シカクさんがやって来た。
「ヨシノ」
その一言で、落ち着きが戻る。
「客間に案内した。茶、頼む」
「………わかったわ」
小さく息を吐いて、ヨシノさんは戻って行った。

「とりあえず客間に案内したが、良かったか?」
「あ、はい。今更ですが、勝手に場をお借りして申し訳ありません」
下げた頭を、撫でられた。
「確かに今更だが、判断は間違っちゃいないだろう。奈良一族は、火の意思とともにある」
「………はい」
シカクさんがいて良かった。

火の意思なんて否定するけど。
生き延びるほうが大切だけど。



木の葉は、優しい。

 
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