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鉄臭い。
暗い。
ジメッとしてる。
やだなぁ、と言葉のかわりにため息が出た。
「大丈夫か?」
隣を歩くイビキさんに心配された。動悸が激しいのは、間違ってもトキメキではない。
『尋問部』
二度と来るかと思っていた場所に、何故かいる。いや、自分で行くと言ったのだが。
やはり奥の奥、厳重に閉められた扉の中に、白いベッド。横たわる白い人ーーー君麻呂だ。
その病は綱手様でも治せない。いや、治せたとしても敵は敵。
動く事もままならないのか、虚ろな目がこちらを向いた。
「もう病がだいぶ進行している。しゃべるのもつらいはずだ」
当然だ。
彼は病を押して戦ったのだから。そしておそらく、いや間違いなくイノイチさんが情報を取り出した。カブトと違って彼から情報が得られたのは、死が間近で、捨て身で、警戒も何もなかったからか。
聞きたい事があるわけではない。ただ一つだけ、言っておこうと思う。
「こんにちは」
返されるのは、苦しげな呼吸とわずかに尖った気配。
「あなたをこんな風にしたのは、私です」
彼の誇りがどんなものかは別として、戦場で死ぬはずだった戦士を、戦えない状態で惨めに生きながらえさせたのは、私だ。
「大蛇丸を殺したのは、私って事です」
向けられた殺意に、何故か微笑みが浮かんでしまった。それと同時に、君麻呂の体から大小様々な骨が突き出る。
イビキさんも、クロシロも出てきて構えるが、その骨はこちらに向かう前に止まった。
あぁ、彼の目はこちらを見据えたままだ。
「死んだ、か」
イビキさんの確認の声が、牢屋に響く。
戦って、死んだ。
感傷と言うほどのものではない。
後悔や懺悔でもない。
敵は敵。
助けられるだなんて思わない。
彼は、これでいいのだ。
精神年齢が四十にもなれば、割り切るものだ。
殺されない、生きているのが当たり前の世界が欲しい。
そのために、殺す。
可能性があるなら戦う。
この先行きがどうなるかなんてわからないけど、私はすでに物語を変えた。
三代目は生きている。
大蛇丸は死んだ。
イタチさんは、木の葉にいる。
長い間、私はずっと子供のままだったのだ。ぬくぬくと守られて、隠れていた。
四十で子供?
あはは、どれだけ馬鹿だったんだろう。
この両手で、出来る事はやってやる。
「…何でついて来るんですか?」
「サエちゃんが心配でネ」
火影塔を出て歩く私の後をついて来るカカシ先生。にっこり笑顔だ。
尋問部の前で別れたからもういないだろうと思っていたのに、いつの間にか背後にいた。
確実にストーカーだ。
「………キモい」
思わず本音が漏れた。
木の葉の通りで、陰の気を放つ上忍がいたとか、いなかったとか。