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ぼー…っとしている。
まぁ、微熱だ。
目を覚ましたら、病院の白い部屋ーーー三度目だ。
無茶をした自覚はある。
クロシロに事態を確認して、とりあえず大丈夫かとホッとする。
もそもそとベッドから抜け出して、受付へ。勝手に退院手続き。
入院してる場合じゃないし、いい加減お家に帰りたい。とにかく帰りたい。
天井あたりから制止の声が聞こえたが、無視………殺気が飛んできた気がしたが、まぁ無視。
この二人がいるなら多少の事は大丈夫だと、私は子供達の所へ向かった。
受付のお姉さんから聞いた病室。ノックをしても返事がないが、遠慮なく開けた。
「サエ…」
ベッドに腰掛けて、ぼんやりと窓の外を見ていたナルト。九尾のおかげか、体は問題なさそうだが、いつもの明るさがない。
「俺、負けちまったんだよな」
悲しそうに、悔しそうに顔を歪ませる。
「サスケの奴、止められなかったってばよ」
握りしめた拳が震えている。
「サスケの兄ちゃんも………サエがいなかったら、今頃ー」
それは、違う。
ナルトがいたから。
サスケには、ナルトが。ナルトには、サスケがいたから。
「ナルト、行くよ」
もう元気だろうと、その手を引いて、次に向かう。
「え?ど、何処に行くんだってばよ!?」
次に向かったのは、サスケの病室。
またしても返事のない病室に、遠慮なく入った。
「サスケ、具合はどう?」
「サエ!ナルト!?」
ベッドで横になっていたサスケは、起き上がろうとするが、無理だ。あれだけ戦ったのだから。
「………」
大変、気まずい。
目をそらすサスケ。
廊下のほうを向くナルト。
ふふふ、笑わせる。
こんな空気、死ぬ事に比べたら何でもない。
「ねぇ、サスケ」
この時の私は、恐ろしいくらい目の座った笑顔だったらしい(サスケ後日談)。
「何か言う事は?」
「な、何か…?」
「何か、私やナルト達に言う事は?ないの?」
にっこりと笑ったまま、サスケのベッドサイドに立つ。ナルトは恐る恐ると言った感じで、こちらを伺う。
「…あいつは、どうなった?」
イタチさんの事じゃねぇよ。
「違う」
「は?」
背後でナルトの気配が揺れた。イタチさんは死んだと思っているから、動揺しまくっているが、とりあえず放置。
「他にあるでしょ?」
今のサスケにイタチさん以上に気になるものはないだろうけど。
「………何だ?」
チッ、言わないとわからないのか。
「助けてくれてありがとう、でしょ?」
本当は土下座くらいしやがれ、が本心だ。その高い鼻地面にこすりつけて謝りやがれ。このクソガキめ。
「音忍達にこてんぱんにされて、さらわれて、無理矢理桶だか樽だかに突っ込まれたんでしょ?違う?」
「…違わない」
途中までは、無理矢理だった。それが、目を覚ました時には溢れんばかりの力ーーー浮かれた馬鹿は、間違いなくサスケだ。
「みんな、命がけで戦ったんだから、ありがとうデショ?」
「………」
さっさと言えよ。
「い、いいってば」
何故ナルトが止める?むしろ一発くらいグーで殴れ?
「サスケがありがとうとか言うなんて、気持ち悪いってばよ!」
ムッとするサスケ。
「…そうだネ。確かにキモいネ。ごめん、サスケ。あんたがありがとうとか言っても、私、一生受け入れない」
「い、一生?サエってば何言ってー」
「この先何があっても、サスケは私にありがとうなんて言わなくていいよ。ナルトには言いなさい。他のみんなには言いなさい。チョウジとネジとキバと赤丸とシカマルには、言いなさい。わかった?」
「………」
「わかったよネ?」
バシンと、その腹を叩いた。
「うッ!!」
「わかった?返事は?」
治りきっていない、横たわる無抵抗な体を、バシバシ叩く。
「サエッ!?やめろってば!サスケが死んじまうッ!!」
いっそ死ね。
このバカ、死んで出直せ。