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カカシは、焦っていた。
けれど心のどこかで、大丈夫だろうとも思っていた。
サエがいるのだ。
また無茶をされたら堪らないけど。
そんなカカシが見たのは、予想外のもの。
小雨の中、気絶しているナルトを抱えて座り込んでいるサエ。
その前に立つ、ボロボロのサスケ。
そしてーーーうちはイタチ。
「サエちゃん、どーなってんの!?」
とにかく現状確認だと、カカシは少女の側に降りる。が、どこか虚ろな少女の目が一瞬交わっただけ。イタチもチラリと一瞥寄越しただけで、こちらに手を出す気配はない。
「………サエちゃん?」
返事はない。
その腕に、しっかりとナルトを抱えた少女。薄い病院着のまま、雨に濡れている。
サスケとイタチの戦いを、止めるでもなし。加勢するでもなし。
手を出さないでいるべきか?
サスケはまわりが見えていないのか、カカシが来た事に気づいていない…?
イタチが本気なら、今のサスケなんて簡単に殺せる。サスケは必死に攻撃するが、すでに消耗しているのか、虚しいものだ。クナイも体術もすべて軽く流され、殴られ、蹴飛ばされている。
肩で息をするのも、精一杯ーーー思わず眉間にシワが寄る。
けれど、殺すほどの攻撃がない。
サエが帰って来いと言った時点で、カカシの中でイタチが敵ではないかも知れないという、ひとつの可能性が出来ていた。
これは、その可能性を大きくするものか?
目の前の戦いはあまりにも一方的過ぎる。それを、ただ見ている少女。
何故だ?
イタチの目が、赤く染まる。
サスケも同じく写輪眼になるが、すぐにもとの黒色ーーーもうチャクラも体力もない。呼吸すらままならない。
…これまでだ〜ネ。
カカシが一歩踏み出そうとした時、ぞくりと悪寒がした。
「何ッ!?」
あまりにも禍々しい、かつて感じた事のあるチャクラ。
これは、大蛇丸!?
まさか!?
カカシの写輪眼が見たのは、サスケ。
その呪印。
動こうとするカカシを止めるのは、少女の手。
振り返れば服を掴まれているが、その目はやはりこちらを向かず、戦いを見入る。
振り払ってでも行こうとしたが、もう遅い。
「アァーーーッ!!」
サスケの叫びとともに、その印から出てきたのは、蛇の妄執。
八つの頭の蛇ーーーその一つの口から、大蛇丸。
「スサノオ」
イタチからは、剣を持つ人型。
あれは、確実に殺られる。
大蛇丸のチャクラと、イタチのチャクラ。その圧力に背筋どころか全身が冷える。
それでも踏み出そうとするカカシを少女は引き止める。焦るカカシが見たのは、微笑みーーー何故だ!?
人型の持つ剣が振り下ろされて大蛇丸に刺さる。その程度では、効かないーーーいや、どろりと溶けるように、大蛇丸の姿が歪む。
禍々しいチャクラがなくなっていく。
大蛇丸が、消えた。
ふらりと傾くサスケの体に、カカシは今度こそ飛び出した。
気を失ったサスケ。
その首もとの呪印が、ない。
………このためか?
いや、間違いなくこのためだ!
イタチはサスケの呪印を解くために戦ったのだ。だから、サエはただそれを見ていた。
落ちている木の葉の額当ては、サスケの物か。
拾うのは、うちはイタチ。
カカシは差し出された額当てを受け取るが、目は合わない。色々聞きたい事がありすぎて、かけるべき言葉も見つからない。
イタチは、少女のもとへと向かった。