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私は一人、崖の上から決着を見ていた。

原作通りの決着をーーー





倒れているナルトと、ふらふらでも立っているサスケ。

二人の間に入る。

「サエッ!?」

一瞬だけサスケと目があったが、私はすぐにナルトに向かった。

息はある。
原作通り、サスケはナルトを殺せなかった。

病院からそのまま飛び出した私は、何も持っていない。包帯も傷薬も、兵糧丸の一粒も。
九尾の力で、もうすでに治り始めている怪我に、私が出来る事はない。

汚れている顔を、袖で拭った。
ナルトは、頑張ったのだ。

「…サエ?」

小さく、伺うようなサスケの声に、振り返らない。
ナルトの頭を抱える。
「ま、待て。サエ!?」
肩に乗せれば、ちょっとふらつく。入院で鈍った体に気合いを入れて、立ち上がった。

「待て!…おまえは俺を止めないのかッ!?」

サスケがどんな顔をしていたかなんて、知らない。



「何で?」

出た声は、後で思えば、相当冷たいものだった。
馬鹿な子供に対する怒りが含まれていた。私自身に対する怒りもまた、含まれていた。

「あんた、さらわれたんでしょ?」
「…そうだ」

サスケは、さらわれた。

「もう敵はいないのに、何を止めるの?」
「!!」

無理矢理連れて行かれた。
敵は、みんなが倒してくれた。

なら今はもう、自分の足で戻れば良い。










ぽつりと、雨が降ってきた。

鈍色の空を見上げて、サエは里へ戻ろうと、一歩踏み出す。
カツンと足に触れたのは、額当て。サスケのものだ。

そして、人の足。





見上げた先、目の前にはーーー





「イタチッ!?」

サスケが驚き声を上げるが、私は冷めていた。

うちはイタチが、目の前にいる。

それで?

あれ?
ここって登場シーンだっけ?



「相変わらず愚かなままだな。サスケ」
その目からは、何の感情も読み取れない。
「貴様、何でここに!?」
困惑と驚きから、徐々に憎しみが増していく。

………憎しみは、簡単には消えない。

「おまえに用はない」
サスケに向けられていた目が、こちらに向いた。
「うずまきナルトを渡してもらおう」
伸ばされた手に、反射で一歩引いた。
そんな私に、イタチさんは一切の遠慮も手加減もなく、蹴りを喰らわせた。

「サエ!?」

ナルトごと飛ばされて、岩肌にぶつかる。

「アッ、ーーーッ!」

一瞬、息が止まる。
かろうじて、抱えていたナルトは無事だ。

痛みに堪えて見たものは、イタチさんと対峙するサスケの背中。





三年分、弱いサスケ。



三年分、健康なイタチさん。










あぁ、そうか。

イタチさんは、やはりサスケが大切なのだ。

 
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