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お見舞いに訪れたカカシが見たのは、クロシロの二人に、両手を捕まれているサエの姿。



「………」



ベットに横になっている少女の腕を、両サイドそれぞれ、押さえ付けるようにしている黒面と白面の暗部。

「…何のプレイ?」
「違イマスッ!」

セクハラ発言に、少女の中でカカシの位置がさらに下がった。



聞けば、自分で自分の怪我を治そうとしたらしい。クロシローーー再不斬と白は、それを止めただけ。
「サエちゃん、きちんと治そうネ」
「暇なんです」
それはそうだろうけど。
少しはこちらの気持ちをくんで欲しい。みんな、心配しているのだ。

「二人とも、隠れなくていいんですか?」
姿を晒したままの再不斬と白に、少女は首を傾げる。
「カカシだからな」
「他に気配はありませんので」
「あぁ、そうですか」
カカシが二人の事を知っているから、ではなく…どことなく馬鹿にされたような気がした。

大体、初対面から扱いが酷い。そこに加えて、再不斬の態度の悪さ(彼の場合はカカシに限らないが)。白はともかく、良い予感がしない組み合わせだ。

「これお見舞い。お団子だヨ」
ガサッと甘栗甘の袋を差し出せば、少女の眉間にグッとシワが寄った。
「…嫌いだった?」
「イーエ、好物デス」
「棒読みッ!?また!?」
お団子を見て、サエがイタチを思い出したなんて、カカシは知らない。

「カカシ先生、サスケはどうしてますか?」
「色々調べてるよ。サエちゃんに言われた通り。なかなか何も出てこないみたいだけど」
「…そうですか」

小さく息を吐く少女は、一体何を考えているのか?

カカシが盗み聞きしていた事はばれているようだが、まぁ問題ではない。
憎しみでまわりが見えなくなっているサスケを導くのは、本来ならカカシの役目。それが出来なかった自分は、やはり役立たずなのだろう。

サエは、知っているのだ。

サスケとイタチーーーうちは一族に、何があったのか。カカシですら知らない事を。
サスケが冷静に振り返れるようになったら、彼女は真実を言って聞かせるのだろう。
アカデミーで、二人が特に親しかったとは聞いていない。けれど、サスケはどこかサエを気に留めている節がある。

いや、サスケだけではない。
ナルトもキバも、紅の教え子達はもちろん、同期達、皆がそうだ。
この子はそれに気づいているのか…いや、気づいている。その上で、強くなれと言うのだ。



「しばらく任務で里外に出るから寄ったんだけど、大丈夫そうだ〜ネ」
ぽんぽんと頭を撫でれば、目線が合う。
「お気をつけて。いってらっしゃい」
「ん、いってきます」
口にして、気づく。
いってきます、だなんて。



あぁ、そうか。



日常だ。

波の国から帰った時、カカシが少女に見たのは、ごく普通の生活ーーーおかえり、だなんて。母の記憶などないカカシにすら、それを思い起こさせた。

平穏。
平和。

そのために、戦っている。

 
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