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退院した次の日、私はご機嫌だった。



朝一に肉屋に寄って、赤丸用ビーフジャーキーをがっつり買い込む。

犬塚家に早速お届け。

足りない赤丸を補給しにーーーいや、頑張ってくれたお礼をしに。



「アン、アンッ」

門をくぐる前に、赤丸の声。私の気配を察してくれたの?

なんて可愛い子…

「アンッ!」

勢いよく飛び出してきた子犬は、ガシッと私の持っている包みに飛びついた。



「………」



私の腕の中の包みにしがみついて、鼻をフンフン、尻尾フリフリ。

可愛い…



大変可愛い。



が、複雑だ。

私ではなく………肉?

微妙なショックで固まっていると、相棒が来た。
「よぅ、もう退院かよ」
自己治療したからね。
赤丸よろしく、鼻をひくつかせるキバ。
「なんだ、それ?」
「赤丸にお肉ッ!」
思わず気合いが入って、拳を握ってしまった。
「…そうかよ」
「あげてもいい?」
「あぁ」
ため息つかれた。何故?

「赤丸〜」
とりあえずキバは無視して、愛しい子犬と戯れる。庭先でなでなで。エロ親父なみに撫でまくる。

よしよし、良い子。賢い子。

とは言え、犬は犬。
食欲という本能が、赤丸を動かす。
「クゥ〜ン」
包みに前足をかけて見上げられる。おねだりされて、私は呆気なく負けた。

は、鼻血出る…。

「おまっ、ちょ、それ全部は食うなよ!」
「キュ〜ン」
「食い過ぎだ。せめて半分にしろ。残りは明日!」
えー…、可愛いのに。
私はポッチャリ系の赤丸でも受け入れられる自信があるぞ。
「半分だよ」
まぁ、飼い主の栄養管理には従っておこう。
「アンッ」
素直にお返事する赤丸は、やはり良い子だ。。
包みからハート柄のお皿(持参)にビーフジャーキーを盛れば、勢いよくがっついてくれた。

ラブリー…

ふりふりな尻尾がマジ可愛い。

うっとりと癒されている私。
それに呆れるキバ。





何か問題でも?



私、これから頑張るんデス。
ちょっとくらい萌えの補給をしても、バチは当たらないはず。



そう、これからーーー





「キバ」
残りのビーフジャーキーを渡す。
「私、班抜けるから」
「………は?」
受け取ったまま、キバは中途半端な姿勢で固まった。
「単独任務」
他の誰にも出来ない事。
いや、単独ではない。一人じゃ無理だ。うん、絶対無理。
「もともと一人多いから、班編成には影響ないでしょ?」
「おまえ、それ本気か?」

ーーー本気?

「死ぬ気じゃあないよ」
「!!」
笑って言えば、目を見張られる。子供達は、大人が思うよりずっと聡い。ある意味すべてを素直に理解する。
「それは…命懸けの任務って事じゃねぇか」
ほら、ね?
「命懸けなのは、私に巻き込まれる人達」

チキンだもの。

私の持っている最大の武器は、情報だ。私の死=情報が消える事。
なので、しっかり護衛してくださいネ?木の上あたりにお願い光線。





…実はスレナルとかで子供達めちゃくちゃ強い設定なら、私何もしないのになぁ、なんて。



「ま、しばらくいないけど、強くなっといて」
「何だ、そりゃッ!?」
「赤丸に怪我させたら、ただじゃおかないって事」
そのくらいわかれ。
「おまえ、結局全部赤丸かよ…」
他に何か?

頭を抱えるキバ。
その頭をなでなでしたら、嫌がられた。可愛くない。










ヒナタは純粋に心配をしてくれた。

………どうしよう。その顔、萌え!!
心中悶える私に、真剣に心を配ってくれるあなたは、間違いなく天使デス!



シノは少し黙った後、いつ班に戻るのかと聞いてきた。
…数ヶ月で済むはず。すぐにでも戻りたい。曖昧に濁した。
ざわざわいってる蟲達にも、またねと言った。

 
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