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怒るのは、嫌い。

こんなにエネルギーの必要な事、したくない。

でもきっと、誰もこの人を怒らないし、叱らない。





「私には、情報がありました」
大蛇丸が来る事。どう仕掛けてくるかという事。
「火影様、あなたには力があった」
それを防ぐために、木の葉の忍者を動かせるのは、里の長。
「どれだけ、死にましたか?」
忍が死ぬのは仕方ないとでも?その人達は、死なずに済んだかもしれないのに。

目の前で死んだ暗部の人達。冷たい死体。温もりはあっても、冷めていく感覚。

忘れはしない。



それは、私にも言える事。
もっと早く、もっと上手くやれたかもしれない。いや、間違いなく、もっと犠牲を出さない方法があったはず。





「後悔してください」
「………うむ」
ようやっと反応が返ってきた。
「あなたは、英雄になんかなれない」
じい様はちゃんと、自来也様から体を起こして、自分の足で立つ。
「火影だから…里のためだとか、仕方ないとか、汚いことも悪いことも色々山ほど見逃して、山ほど丸呑みしてきたんでしょ?そのくせ死んで英雄になる?ふざけないでください」
じい様相手にネジの時みたいなキレ方は出来ない。この人は、里のためなら死ぬことを厭わないから。
「あなたはまだ、何の後始末もしてない。働いて、働いて働いて、働いてから、死んでください。すっきりさっぱり、後腐れなく」



火の意思なんて、クソ食らえ。
物語の根幹を否定。
生き延びてなんぼだ。意思だけ残して死なれても、こっちは堪らない。大切なものがあるなら、生きて傍にいて、守り抜いてもらわなきゃ困る。
死ぬなんて、本当にどうしようもない時だけだ。

…そもそもこの人がしっかりしてくれてたら、私が頑張らなくても良かったんじゃないか?

あー…、イラッとして来た。



「…老体に無茶を言う」
「老体で蛇退治しようとしたのは誰デスカ?」

じい様やっと笑った。
苦笑だけど。

「いいんですよ。お礼なんて」
はは、と笑ってみせる。
「ただちょっと、私と私の家族の安全と平穏のために、頑張っただけです」
木の葉が平和じゃなければ、私も我が家もまずいじゃないか。もっと早く開き直って、小狡く生きてれば良かったかも。
「家族が人質になったりしたら、私、木の葉なんてあっさり見捨てます」
ヒナタと赤丸も連れて、砂にでもお引っ越ししよう。
「そうならぬように、勤めよう」
「よろしくお願いします」
是非に。
「とりあえず、入院費は火影様に請求します」
「…大部屋にするか?」
「このまま個室希望」
「経費でー」
「じい様個人持ちデス!」
まったく。
急にゲンキンになったな、このジジイ。

「反省点は色々有ります」
ほんと、我ながらお馬鹿だ。思い返せば返すほど、ため息が出る。
「その1ーーープランAがダメだった時のために、プランBを考えておく」
自来也様いればいい、くらいじゃダメだ。ちゃんと考えて、それがダメな場合も考えないと。
私の言葉に頷く自来也様とカカシ先生………なんか、イラッときた。我慢出来ない。
「その2、自来也様頼らない」
ウッとか言うエロ仙人。頼りないではなく、頼らない。今回最大の失敗デス。
「その3、カカシ先生頼りない」
「えぇっ、また!?俺やれるだけやったヨッ!」
「その4、木の葉の暗部も頼りない」
天井あたりから、鼻で笑うような気配。すべてあの二人のおかげだ。他国の抜け忍に守られる里ってどうよ?

「とりあえず、次の火影探してください。その腕じゃあ無理ですから」
「…ワシは働かされるんではなかったか?」
「もと火影として、存分に働いてください」
「む、なるほど」

とりあえず、綱手様だ。

 
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