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今日は、雨。



自己治療してると、どこかからキッツイ視線ーーーあの二人だ。怒られたくないので、そこそこでやめておく。

もう起きても平気になった頃、黒一色の服を着た火影様がお見舞いに来た。
カカシ先生と自来也様も一緒。自来也様がいると病室が狭い。

………役立たずめ。

半目で睨めば、自来也様は目を泳がせてしどろもどろ。
「いや、その、まさか大蛇丸がいるとはなぁ…?」
気づけよ。
「すまん」
それで済めば私もイラッとしたりしない。伝説って何?エロ伝説か?
まぁ、ちゃんと説明しなかったのは私だ。今度から頼らない(固く決心)。

次いでカカシ先生も睨めば、反論された。
「…俺、頑張ったヨ?」
確かに、火影様守りながら初代やら二代目やら大蛇丸やらと戦うのは、大変だ。
仕方ないから、許そう。
「チッ…」
「舌打ち!?」
あ、やべ。つい出てしまった。
「俺に対してヒド過ぎない?ねぇ、何で!?」
これと言って明確な理由は………あ、あれだ。
現物見てガッカリ、みたいな。
漫画ではカッコイイって思ってたけど、実際に公然と18禁小説読んでる成人男子だなんて、危ない。良い子は近づいてはイケマセン。
「何となく…」
「ヒドッ!」
理由なんて教えてあげない。軽蔑の眼差しに気づけ。





原作通りなら、今日は葬儀の日か。

喪服の火影様。

合同葬儀ーーーやはりそれなりの数の忍が犠牲になったのだ。

「涙雨じゃな…」
窓の外を見上げて、ぽつりと呟くじい様。もとが小さいくせに、さらに小さくなった。特に自来也様が隣だと。
何しろ片腕なくしたから。

………そんなんじゃ、困る。

「火影様」
私の声音を察したのか、じい様は窓からこちらに目を向ける。そんな弱々しい眼差しなんていらない。
なくなった右腕の部分にそっと手を当てる。これだけで済んだのは、幸いか。

肩を掴んで、確保。

思いっきり、ビンタした。



バシンッーーー!



衝撃にふらつくじい様。
「えぇっ、サエちゃん!?」
驚くカカシ先生。
「さ、三代目!?」
じい様を受け止める自来也様。

チャクラ使ってない、ただのビンタですが、何か?私だって腹に響いて痛い。
あ、じい様も治療途中?

「サエちゃん、何て事すんのッ!?」
カカシ先生が怒るが、怒らなきゃいけないのはこっち。あなただって、このクソジジイを怒るべき。
左手で頬を押さえて、呆然としているじい様を睨む。ぱちくり瞬きされて、この意味を理解していないとわかる。

「…死のうとしましたね」



火影様は、死のうとした。



「大蛇丸と一緒に、死のうとしましたね」

事前にちゃんと教えたのに。
大蛇丸対策も、結界対策もしていなかった。身辺に置く暗部こそ多くしたようだが、カカシ先生と再不斬と白がいなかったら、原作通りになっていただろう。
一般住民の避難は、一人も犠牲が出ない完璧さだったにも関わらず、己自身はないがしろ。

私の言葉に目を伏せるじい様。つまり、図星か。

「まさか、生きるのに疲れたとかぬかしますか?」
「待て待て、嬢ちゃん。何をー」
一睨みすれば、自来也様はじい様を抱えたまま黙る。
「英雄になるとでも?」
殉職すれば、英雄。
火影として、里の英雄として。
道を誤った弟子とともに、悲劇的に。大蛇丸を道連れに死んでもいいと思ったのだ。

「笑わせないでください」

腹の底から、怒りを引きずり出した。

 
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