1

□13
2ページ/4ページ


ナルト達が帰った後、わずかの静寂。

「サエ…」

おもむろに口を開いた紅先生だが、気配を察知して、ため息をひとつ。





勢いの良いノックの後、扉を開けたのはキバ。ヒナタとシノもいる。
紅先生の言っていた通り、ヒナタの手には花束。

美少女と花ーーー絵になる。

脳内で勝手に癒される私に、ヒナタはさらなる癒しをくれる。
「サエちゃん、起きても大丈夫?」
あなたの笑顔ですべてが大丈夫デス。だから、心配そうな顔なんてしないで。その顔もいいけど(←変態)。
「大丈夫。お腹痛いけど、すぐ治すから」
「おまえ…治すって無理矢理じゃねぇか」
黙れ、キバ。
治すって言ったら治す。
「あの、これお見舞い。イノちゃんがいっぱいオマケしてくれたの」
「あー…良い香り」
きつ過ぎないささやかな香りは、イノとはちょっと違うーーーいやいや、彼女の繊細な気遣いだ。花屋の看板娘は素敵デス。

「花瓶借りてくるわね」
あまり騒がないようにと、主にキバに注意して、紅先生は花束を持って出ていった。

美女と花束もいいな…。



先生がいなくなったのを確認した後、キバはきょろきょろ。
扉は閉まっているし、ここは個室。何を警戒しているか知らないが、挙動不審だ。怪しい。思わず眉間にシワが寄ってしまった。
「キバ、落ち着いたほうがいい。何故ならサエが不審に思っているからだ」
「なっ…俺はただちょっと喜ばそうと思ってだな!」
「キ、キバ君、声大きいよ。誰か来たらばれちゃう」

何が?

もぞもぞ動き始めたキバのパーカーの背中。

「アンッ!」
「声がでけぇよ!」

キバもね。

服の中に隠れていた赤丸が出てきた。病院だから、犬は普通入れない。

パーカーの首もとから顔を出す赤丸は、めちゃくちゃ可愛い。
「赤丸〜」
私が手を伸ばせば、赤丸はベットに飛び乗る。ほお擦りされて、この日最大の癒しを得た。
鼻血で死ねるかも。
「こ、これが一番喜ぶだろ!?」
はい、そうです。
照れながら言うキバに、へにゃりと笑った。

あー…、幸せ。



「そろそろ紅先生が戻ってくる」
シノは蟲を偵察に使ったのか。病院なのに犬と蟲………いや、私のためだ。グッジョブ!
なでなでしまくった後、赤丸をキバに返した。

ちょっと膨らんでいるキバのパーカー…たぶん先生にはばれているだろう。



「…妙に静かね」
花瓶に花を活けてきた紅先生は、不自然な空気に突っ込む。キバなんて目を反らし過ぎだ。
「スルーしてください」
へにゃへにゃの笑顔の私に、それ以上何も言わなかった。

「サエちゃん、思ったより元気そうで良かった。また来てもいい?」
「うん、またね」
もちろん。
むしろ来て!
ヒナタは天使!!

みんな、怪我してなくて良かった。



「まったく、病院なのに」
三人が帰った後、紅先生は盛大なため息をついた。やはり赤丸に気付いていたのだ。それを見逃してくれるなんて、さすがは紅先生デス。

「サエ」
改めて名を呼ばれる。
「みんな、あなたの心配をしているのよ」
ベットから見上げる紅先生の表情は、逆光で少し暗い。けれど、優しいものに違いない。
「何があったのかは知らないけど、それだけは覚えておきなさい」
「…はい」

やはり、マザーは偉大だ。

紅先生に母性を見る。
これがカのつく上忍師あたりなら、聞いてくるのに。口で聞かずとも、目線で訴えてきてウザイに違いないのに。

この班で良かった。
みんな、優しい。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ