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本選の抽選は、原作通り。
ナルトとネジ、サスケと我愛羅、シノとカンクロウ、シカマルとテマリーーー私はチョウジを負かした音忍。
見事に物語の流れと関わらない組み合わせに、神の采配かと遠い目。

神様は何してんの?










解散となって、それぞれ家路についた時、もうすでに諦めていた火影様から接触があった(決して忘れていた訳ではナイ)。

イビキさんだ。

「ついて来い」
しばらく見下ろされた後、それだけ言って、ずんずん先に歩いて行く。
「え…」
いやいや、ちょっと待って。デカイ大人とチビの子供では、足の長さが違い過ぎ。かつ私ヘロヘロ。

ふらふらしながら追い掛けた。



息切れが…酸素ください。



「おい」
「え?」
気づけばぶつかるくらい近くにイビキさんがいた。見上げると首が痛いのは歳のせいではないはず。
「しんどいなら言え」

………担がれた!?

まるで荷物のように肩に担がれた私。拷問デスカーーーッ!?脳内パニック。でも抵抗する体力がない。気分はドナドナ。

私の口からは情けないため息しか出なかった。





連れていかれたのは、火影室。

とりあえず良かった。
かなり優しくソファに下ろされて、感動してしまった。イビキさん、ファンです!(疲れというものも、人をおかしくするらしい。)

目の前には火影様。
後ろにはイビキさん。

あれ?
挟まれてる?

「あの…」
空気が変だ。厳しいわけでも優しいわけでもない。
「ふむ、そう構えるでない。疲れているところをすまんのぅ」
言葉だけは友好的。



火影様の目はーーー





見定める目。



「カブトは先程、暗部とカカシで捕えた。あとの者は知らぬよ」
「はぁ…そうですか」
折り鶴は正しく火影様に届いたようだ。
カカシ先生は知ってる。そして紅先生は知らされていない。今すぐ助けを求めたい気分なのに。代わりと言っては何だが、ソファの手摺りに縋り付く。
「そんなに怯えるな。何も尋問する訳じゃない」
イビキさんが優しい!?

でもね?

…尋問デショ、コレッ!?

「それって、お話の内容によりますよね?」
「まあ、そうだ」
肯定された。
私の話次第で、不確定な危険因子扱い。すなわち、殺処分対象だ。泣けてきた。



あー…私の覚悟どこ行った〜?帰って来〜い!?



「カブトの脳には強力なプロテクトがかかっていて、手を出すには危険がある」
しっぶい顔のイビキさん。
もう尋問したの?
イノイチさんでも難しいのか?無理したらこちらに害が有りそうで嫌だな。
「今は尋問部内の部屋だ。チームメイトは、記憶を操作された形跡がある」
尋問部の部屋って、牢屋の事?さらっと流しかけたが…私の背筋はゾワッと鳥肌立ちまくり。
「カカシの話では、木の葉は平和ボケしていると思っていたが意外だ、と笑われたそうだ。逃げるつもりでいたんだろう」
けれど、原作と違い暗部総出。カブトはさぞかし慌てただろう。
「暗部の者、数名が深手を負った。木の葉はカブトを見逃すところじゃった。感謝しておる」
「いえ…」
確かに木の葉の警備体制には問題あり過ぎ。大蛇丸が簡単に忍び込めるだなんて。
「たが、大蛇丸に繋がるものがない。薬師の家も調べているが」
カブトが証拠を残しておくようなまねはしないだろう。

なるほど。

私が連れて来られたのは、情報の確認か。

「おまえは一体どうやって、大蛇丸の事を知った?」

知った、のではない。

「…知っているからです」



知っていたのだ。



「おいー」
「暗部に、死者は?」
私の返答が気に入らないイビキさんの声を遮る。
「死者はおらん。助言通り総出でかかったからの」
「…そうですか」

あぁ、良かった。

余計な死者は出ていない。
それならもう、私の言うべき事はない。










ひとつ、決めた事がある。





まだ言葉もない頃。

『今』生きている世界を、ようやく受け入れた頃。

物語を変える、変えないーーーそんな事よりも前に、決めた。



「サエ」
呼ばれた名前に顔を向ける。そこにいるのは『今』の兄。
「絵本だ。普通のやつ」
来い来いと手招きされて、よろよろ歩いて行った。
「お父さんはダメオヤジだからな。赤ん坊に忍術書なんて…ほら、これが普通だ」
普通を強調する兄の開いた本には、クマさん。

真っ当な絵本だ!
この世界で初の絵本に感動してしまった。

舌足らずにあぅあぅ言いながら感動を表現する。手もパチパチ。
「やっぱり。こっちのほうが良いに決まってる」
ふと見れば、兄の目線の先には『今』の父。柱の影から覗くようにしている父。悲しそうに眉が八の字な父。
「そ、そんな事ない!サエはいっつも頷きながら忍術書を読んでるぞ」
「赤ん坊に無理だろ」
「サエは優秀なんだぁ!」

何しろ中身が大人。わかりますとも。
父だって喜ぶから。

でもそれを、わかるだなんて、知ってるなんて、口にはしない。



決して、口にはしない。










『今』いる場所が、私の家。

『今』いる世界が、生きる場所。










私の持っている記憶ーーー



誰にも言わない。

 
 

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