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ハヤテさんが初っ端から本気ではないと祈って………そうじゃないと困る。





「では、行きますよ…ゴホ」
こんなタイミングでも咳き込むなんて、どんな癖だ。でも今は突っ込んでいる場合ではない。何しろ相手は刃物。



ザッーーー、と一陣の風。

剣を抜くと同時に、ハヤテはサエの目の前。振りかぶる。

「危ねぇっ!」
ガキンッと鈍い音がしたのは、ナルトが叫ぶと同時。
「…へ?あれ?」
剣は、サエの手に握られ止まっている。その刃を向けたハヤテは、驚愕の表情。

何故ならーーー

サエは、刃を素手で握りしめて止めたのだ。もちろん、手は切れていない。

左手で刃をわし掴み。右手は殴り掛かる動作を見せる。ハヤテは剣を離して下がるが、サエが狙ったのは、ハヤテ本人ではない。

パキンッーーー

高い音がして、サエの殴った剣は折れた。

まずは、相手の戦力を削る事。そしてただでさえ大人と子供、リーチの差があるのだから、剣という長物の破壊だ。
それから殴ると印象付ける事。

てゆーか刃物怖い。とにかく怖い。マジ怖い。

「手の平は、チャクラでガードしたんですね…コホッ」
はい、その通り。
「次はそうはいきませんよ」
小刀を取り出すハヤテ。
鈍い音がして、小刀はガードするサエの腕に刺さる。が、それは変わり身。腕は小さな巻物。体は丸太に変わる。すぐに背後に現れた少女に、ハヤテは慌てる事なくクナイを投げるが、フッと掻き消える。分身だ。ボフンッと音がして、丸太が少女に変わる。いや、サエが丸太に変化していたのだ。
けれど、上忍相手に通じる手段ではない。
ハヤテは先程のように拳が来るかと攻撃に備え、同時に次の手を振りかぶるが、相手は腕を上げ指差しただけ。それ以上迫っては来ない。

その指先がまっすぐにこちらに向いた瞬間に、ハヤテの世界は歪んだ。










目が覚めたのは、激痛によって。

「ぁ、ーーーぐっ!!」

叫ぶのは、意地で堪えた。
体が傾く。
そのまま手をついて、それ以上痛みが増さないように、体を支える。
座り込んだハヤテが見たのは、途中から有り得ない方向に曲がっている自分の右足。骨折…筋肉も神経も切れたか?

眼前、確実に懐に入られ見下ろす状態で、少女が言う。

「あー…やり過ぎ?」

ハヤテはサエに、足を殴られ、へし折られたのだ。



「治しましょう」
「…助かります」
折れた足を取られ、翳された手からは暖かいチャクラ。痛みは堪える。
「すみません…ゴホゴホッ。先程のは幻術ですね」
「はい」
やられた相手、それも下忍の少女に治療されている上忍。情けなさと痛みで、ちょっとかなり泣きそうだ。

「で…判定は?」
ふと、サエの声が低くなった。ハヤテを見る少女の顔は、無表情。
患部に当てられたチャクラから、パチパチと火花のようなものが出ている。攻撃的な…?

負傷した部分を確実に確保された状態だ。



「………」



「もう一度見ますか?」
「いえ、結構デス」
サッと目をそらすハヤテに、観戦者は何を見たのかと疑問が膨らむ。

「合格です、ゴホッ…ゲホッゲフン!」
「あー…、私もうチャクラないので、治療は医療班の方にお願いします」
「そ、そうですか」

 
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