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安全。

安穏。



当たり前にある日常。

時おり事件や事故はあっても、平和な日本。

そんな所で長年生きた記憶のある私が、戦いを好むわけがない。得意なはずもない。
だから、中忍試験だって、受けたくなかった。

それでも、今ここにいる。










「ゴホッ…早く始めましょう」

階段途中で停止した私に、ハヤテさんが声をかける。相変わらずゲホゲホいってる。

「ハヤテさんって、病気なんですか?」
「いえ、私の咳は癖のようなものです。気にしないでください」
「うつったりしません?」
「しません」
「………ウィルスで攻撃とか」
「しません!…ゴホッ」

「…近づきたくないなぁ」

ぼそっと一声漏らしてみた。

知っている。
剣術の使い手。
木の葉一の剣士、だったっけ?



「サエ、さっさとやっちまえってばよ。さっきみたいに!」
いや、ナルト。
さっきのネジに対する悪態と同じにしないで。あれは私普通じゃなかったから。
「サエ、頑張りなさい」
紅先生の優しいお声に、縋るような目を向けてしまった。私、もう十分頑張りましたよ?

重い足取りで中央に出た。
棄権しようかなんて頭の隅で声が聞こえる。あくまで隅。くだらない会話とだらだらな態度で、色々考えてみる。





「さぁ、始めましょう…ゴホッ」

さぁ来いと、受ける体制のハヤテさん。



「あのぅ…」
やや目をそらしながら、言いにくそうに。
「大変申し上げにくいんですが…私、さっき見た通り医療系でして」
「見事な治療でした」
え、ほめられた!?
「えっと、こちらから仕掛けるの、苦手なんです。専守防衛とでもいいましょうか…」

専守防衛ーーー日本の自衛隊。

「あの…そちらから仕掛けてきて頂けませんか?それ、使うんですよね?」
ハヤテさんの腰の剣を指差す。
「それは構いませんが、怪我では済みませんよ?」
「いや、逃げます」
「………そうですか」

乗ってきた時点で、形勢はこちらに傾く。

「逃げるって、何言ってんだ。ぶっとばせ!」
いやいや、ナルト。
私あんたじゃないから。

てゆーかさっきから仲よさ気に話し掛けてきてるけど何で?私、ナルトはおろか同期とそんなに親しくした記憶ない(ヒナタ除く)。邪険にした覚えもないけど………うん、普通に話し掛けられて普通に話しちゃってたかも?アカデミーで一番ナルトと話してたかも?
ナルトだからか?

「あのね?医療忍者が怪我したら、誰が治療するの?医療系の役目は自分が治療に専念出来るように無事でいることだから」
「確かに」
ハヤテさんも、まわりの大人達も頷く。

「では、行きますよ…ゴホッ」

構えるハヤテさんに、少し笑えてしまった。





死に際に夕顔さんを心配しても、遅いんだから。

 
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