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ナルトの気合いのおかげで、一次試験終了。
イビキ試験官が説明もとい激励してる間に、私は小さな書き付けをする。
両サイド、後ろの席に誰もいなくて良かった。早々にカンニング退場してくれてありがとう。
…忍術使われて遠くから覗かれたら終わりだけれど。特にカブトとか音忍とかカブトとかカブトとか。
ガッシャーンと盛大な音がしてアンコさんが登場。書き付けは折り紙の鶴にした。
アンコさんに急かされて、二次試験会場へと席を立つ受験生たち。
荷物の中身を確認したり、靴履きなおしたり。のろのろとしているふりをして、一番最後まで残った。
「イビキさん」
出口で振り返れば、試験中の形相とは違い、良い顔をしているおっさん。あ、違う。この人確か見た目より若いはず?
「ありがとうございました」
「…礼を言われたのは初めてだ」
それはそうだ。コッワーイ面して酷い試験したわけだから。
少し戸惑っているイビキさんに、何故か笑えた。
「理解しているつもりです」
「ガキが…気をつけろ」
ここで気をつけろだなんて、甘い人。
木の葉は、優しい。
「これを」
袖口から、隠していた鶴を出す。訝しまれるが、無理矢理押し付けた。
「火影様まで。よろしくお願いします」
彼が中身を見る前に、二次試験会場へと向かった。
『カブトは大蛇丸の手足。暗部総出にて、二次終了後に捕縛すべし』
この情報が、正しく火影様のところに渡るように祈った。
途中で内通者やダンゾウの息のかかった暗部に見られたら、私は死ぬ。間違いなく。イビキさんなら、大丈夫なはずだ。
あ、イビキさんが私を尋問する可能性が…いやいや。ないと信じよう。
………帰りたくなって来た。
死亡の同意書なんて、サインしたくない。しっぶーい顔してたら、ヒナタに励まされてしまった。
「サエちゃん、頑張ろう」
あなたが私の癒しです。ちょっとだけ恩返しという意味で、ナルトに声をかける。
「うん…ナルトもね」
「おうっ!先にゴールで待ってるってばよ」
いや、ナルト達は確か一番最後だから。そんなナルトにヒナタは頬を染めている。可愛い!
「…サクラ、これあげる」
「え、何?」
ガサゴソと荷物の中から小さな包みを出す。事前に用意していたものだ。
「イノも」
差し出せば、少々面食らった顔をされた。
中身はただの非常食セットと兵糧丸。
お腹がすくって最悪デス。
「…怪しいものじゃないわよね?何?」
あれ?私疑われてる?ちょっとだけ悲しい…。
「後で確認して、要らないなら捨てていいよ」
「用意周到だな」
知ってたから。訝しむシカマルからそっと目をそらす。
「期間長いって聞いたからね」
サクラやイノより、シカマルに疑われるほうが怖い。この子、本当は頭良いもの。
事前に用意していたーーー覚悟のないまま、少しは楽になるように。少しは彼らの助けになるように。
「じゃあ、また後で」
叫びながらスタートするキバの後を追った。
ちなみにサバイバルを十八番にした覚えはない。全く、これっぽっちもない。
色々ない頭をしぼって考えた結論は、死の森では何もしない。てゆーか出来ない。
とりあえずナルトもサスケも死なないから。うん、ごめん。
呪印は防ぎたいけど、準備が足りな過ぎるし、方法が思いつかない。大蛇丸本体になんて、危険かつ先が読めな過ぎて手が出せない。
私はチキン。
どうか、余計な死者が出ませんようにーーー