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原作通りに、サスケは一人になってしまった。

原作通りに、ナルトはいたずら三昧だった。



時間が過ぎるのは早く、無常。
私は私の事で精一杯だ。日々の授業と鍛練に勤しんでいれば、あっという間に卒業試験。

これから、原作突入ーーー

何故に木の葉に生まれて、しかも同期に?



今更ぐだぐだ言っても仕方がないのだが。

全部忘れて、楽になりたい。










「次、錦サエ」
名前を呼ばれて試験会場の教室へ。内容は分身の術。
アカデミー通ってれば出来るよな、普通は。出来ないナルトが謎だ。いや、あの子は九尾のでかすぎるチャクラが邪魔してるんだっけ?でも変化は出来る…謎だ。

「リラックスして。サエちゃんなら余裕だよ」
優しいアドバイスをくれるのは、ミズキ先生。この人が実は悪党なんだから、人間ってわからない。
うさん臭いと思ってしまうのは、私が知っているからか。
「サエは授業も真面目に受けてるし、自主練もしてるようだし、大丈夫だろう。さ、はじめ!」
本当に超がつくほど良い人のイルカ先生が、容赦なく試験開始だと笑顔で告げる。
この人、実は容赦ないよね。教師として。



とりあえずーーー深呼吸をひとつ。



「分身の術!」



「ーーーうん、細部までよく出来てるよ」
「流石はサエ。文句なしに合格だ」

いくら私の中身がおばさんでも、緊張くらいする。へぅ〜っと奇妙なため息を吐きながら、よろよろと額当てを受け取った。

「おまえ、年寄り臭いな」
「それはどーも」
「いや、ここは反論するところじゃ…イルカ先生も女の子に年寄りって」
「あ、そうですね。サエ、すまん」
「いえ、気にしてません」
実際、あなたよりも年上ですから………自分の歳を考えて、ちょっと落ち込んだ。
いやいやいや、ピッチピチの十二歳デス!










ブランコに乗って一人黄昏れているナルト。いや、落ち込んでいるのだ。
わざわざ聞こえるように厭味を吐くおばさん達。

嫌なもの見た。

ナルトは結果的に大丈夫だからと、強制的に無視。あのババァどもは言葉だけで手は出さないし。これは、ナルトの成長に必要なイベントだ。
なるべくナルトを見ないようにして、家路へと急いだ。










一般家庭のわが家が何故娘を忍者にしたのか知ったのは、その日の夜。

アカデミー卒業祝いのご馳走に集中していたら、父が一言。
「いやぁ、俺の夢が叶ったよ」
どういう事かと首を傾げる。
「サエ、立派な忍になれ!いや、なれる。父さんの夢は任せたぞ」

………え?

なにそれ。初耳。

忍者になれなれと言われてきたが、あなたの夢だったんですか?それで娘を危険な道に?
確かに父は忍術マニア………気付かなかった私が悪いのか!?私のせいかッ?

毎日の事にいっぱいいっぱいな私に、そんな余裕はない。



「本当に忍者になったんだな」
仕事から帰ってきた兄には、呆れたような顔をされた。知っていたなら、止めて欲しかった。
「いや、最初矛先が俺だったからさ」
つまり、幼い妹をイケニエにしたと?

生温い感じの笑顔を向けられて、ちょっとキレた。

成人手前の兄の脛を蹴りつけて、悶絶させてやった。
ちゃんと手加減しましたとも。

 
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