1
□02
2ページ/3ページ
さて、今日のお昼はどこで食べようか。
アカデミーに入学して数ヶ月、落ち着いてお昼を過ごせる場所を、サエはまだ見つけられていない。
サスケに会った庭は除外。屋上なんかもシカマルが居そうだ。
そんなわけで、毎日かなりひっそりとした場所になってしまっている。はたから見れば陰鬱だという事に気づいていないのは、本人のみ。
演習場の片隅の丸太に腰掛け、意外と木漏れ日が気持ちいいなと、お弁当を広げようとした時、視界に金色が過ぎった。
えー…?
見ちゃったよ。
何で私の目につく所で?
こっそり茂みに隠れて伺えば、小さなナルト。そして大人が一人。
名前覚えてないけど、先生だ。そしてあからさまに悪人面。
そんな人に人気のない場所につれて来られるなんて、危ない。
………何が起こるかなんて、言うまでもない。
ナルト、あんたちゃんと相手を見ようよ。今までだって色々嫌な事あったはずなのに。危機感なさすぎ。
いや、ナルトの真っ直ぐな何かがあるからこそか。
「なぁ、どんな技教えてくれるんだ?」
………お馬鹿。
言葉巧みに(?)騙されたわけだ。小さなナルトが、めちゃくちゃ嬉しそうにはしゃいでいる。大変可愛い。でもお姉さんーーーおばさんはあなたの将来が心配です。
「ふん、てめぇに教えるものなんざーーー」
いよいよ悪党全開な感じのおじさん先生は、途中で固まった。
「ん?」
停止した相手に首を傾げるナルトは、後ろ姿でも可愛らしい。でもお馬鹿。
ナルトがおじさんの見ている方向を振り返れば、私ーーー
えぇ、私がいます。
こっそりナルトを連れ出して、こっそり痛めつけるつもりだったのであろうおじさん先生には、都合か悪い。
「あー…コンニチワ」
とりあえず挨拶すれば、戸惑うおっさん。そりゃそうだ。やましい事するところだったのたから。
「お、おまえこんな所で飯食ってるのか」
「はぁ…」
まだ食べてませんが。
わたわたし始めた挙動不審な大人に、笑いが込み上げてくる。
「き、今日は無理だな」
「え!?待つってばよ」
逃げた。
残されたナルトは、事態を全くさっぱり理解していない。
私は、何事もなかったように丸太に腰掛けて、今度こそお弁当を食べはじめた。
で、ナルトは何でそこから動かないんだ?
しかもこっちを見てゴクリと唾を飲みこんだ。
………まさか。
「あー…、ナルト?」
「な、なんだってばよ!?てゆーか何で俺の名前知ってるんだ?」
ナルトの目線が私の顔とお弁当とを行き来する。お弁当のほうが比率が多い。
「同じクラスだけど?」
「え、マジで?」
私、ひっそりこっそりしてたからね。
「おいで」
腰掛けている丸太の隣をポンと叩く。
「おにぎりあげる」
「!!」
びっくりされたが、言わずもがな。丸わかりデスヨ〜。
「私は、錦サエ」
「うずまきナルトだってばよ。俺ってば今日昼飯忘れてさ。さっきの先生が飴くれたけど、全然足りないってば。助かった〜」
あぁ、言葉だけじゃなくて餌でも釣られたのネ。
その後、ナルトを探しに来たイルカ先生が、職員室のおやつをわけてくれた。