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一般人の私にも、チャクラというものはあるらしい。
『チャクラの基礎』なんていう本の通りに、ヘソの辺りに意識を集中ーーー何かしら生暖かいものを感じる。
意外と簡単!?
身近に忍者はいないので、稽古をつけてくれる人はいない。これで正しいのだろうか?
アカデミーに入学するまで、独学で頑張るしかなかった。
どうやら、私の修業は正しかったらしい。
アカデミー入学早々、チャクラコントロールが良いと誉められた。コントロール以外、自主練出来なかったから。これが私の唯一の武器ーーー武器になるのか?
あ、医療忍術に使える?
ふと、睨まれている事に気づく。
うちはサスケだ。
あれだ。嫉妬だ。
自分じゃない誰かが誉められたのが気に入らないんだ。ガキだな。
でも素直な子供だ。
このころのサスケはまだ一族殺されていないから、多少取っ付きにくい雰囲気なだけで、普通の子供。
すいっと、不自然にならないように目を逸らした。
………うちは一族助けよう作戦なんて、思い付かない。
三代目に知ってる事全部話す勇気もない。私は私が大事。弱い子供だ。マダラやダンゾウに始末されるなんて嫌だ。
うん、無理。ごめん。
心中ぐるぐる言い訳をして、気まずい気持ちには蓋をした。
同期なのだ。
ナルトやサスケ、サクラ達と。
主人公達となるべく関わらないように。ひっそりこっそり。
それなのにーーー
何故か目の前にサスケ。
一人静かな校舎の裏庭でお弁当を食べている私の目の前にサスケ。
…目が合いマシタ。
すぐに逸らされたが、彼の目が私の手にあるおにぎりを見た瞬間、盛大にお腹の音が聞こえたのは、決して空耳ではない。恥ずかしさで赤面するサスケ少年が、お弁当を忘れて空腹なのは、間違いない。みんながご飯食べてる教室には居づらくて、うろうろしてたら私に会っちゃったってトコですか?
「………サスケ、おいで」
観念するしかないだろう。
何しろ私の中身はピーッ歳で、サスケは漫画よりも小さい可愛いげのある子供。このくらいの仏心くらいはある。
名を呼ばれて、戸惑いつつもそろそろと近づいてきたサスケに、お弁当を差し出す。
「おにぎり、一つあげる」
「な、何で!?」
いや、ここで何でもクソもないでしょ。
「いらないから。勿体ないでしょ?」
「…なら、貰ってやる」
うわぁ、なんだこのガキ。面白いくらい子供な反応のサスケ少年に、吹き出しそうになるのを堪えた。
「サスケ」
ふいに他所からかかった声に、顔を上げる。
「兄さん!?」
イタチーーーッ!!?
何故ここに!?
既にアカデミー卒業して暗部にまでなって、うちはと木の葉の板挟みなはずの兄さんが、何故?
パニックに陥りそうになった思考は、彼の手にある四角い包みを見て治まる。
可愛い弟に、お腹を空かせている哀れな弟に、お弁当を届けに来たのだ。
忙しいんじゃないのか?心休まる暇もないくらい。いや、唯一の癒しである弟に萌えに来たのか?萌えか!?(どうやら落ち着いたと思った頭は、まだどこかに飛んで行って帰って来てない。)
「兄さん、お弁当持って来てくれたんだね」
おにぎり片手に駆け寄るサスケ。その頭を撫でるイタチ。
「あぁ、教室にはいないから、探したぞ」
「ありがとう」
ありがとうを言うサスケだなんて、貴重なものが見れた。しかも嬉しそうな笑顔。
しかし、我関せず。
仲睦まじい兄弟のやり取りを眺めながら、私は自分のお弁当の残りを平らげた。手早く片付けて、その場を去る。
「あ、君は…」
声をかけようとするイタチにぺこりと一礼して、瞬身で姿を消した。
あれ以上、兄弟愛にあてられたくない。イタチの記憶にも残りたくない。
サエの見捨てた兄弟ーーー
見たくない。
「消えた!?」
「瞬身の術だ。もう使える子がいるんだな」
「あ、あれくらい俺だってすぐ覚える!」
イタチの記憶に、ばっちり残ってしまったのだが。
「サスケ、お礼は言ったのか?」
「あ…」