オムニバス
□向日葵
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それは放課後の事だった。
デンゼルはクラスの友人達と、校舎前にある初等部用グランドでサッカーをして遊んでいた。
「デンゼル!」
そう呼ばれるのと同時にサッカーボールが自分の所にやってくる。
「いっけぇー!!」
遊びとはいえやはりゴールは決めたかったデンゼルは、気合いを入れてボールを蹴った。
が、
「デンゼル〜力入れすぎ!」
「え?」
友人に言われて目でボールを追うと、サッカーボールはゴールを通り抜け、校舎の二階を目掛けて飛んで行った。
ボールが見えなくなるのと、ガチャン、と何かが割れる音が同時にして、デンゼルはしまったと思った。
「あの辺って保健室だよな?」
「うん…何か割れたよな?」
「ごめん!俺謝ってくる!今日は先に帰ってて!」
そう言うと、デンゼルは走って校舎に向かった。
「……。居ないのかな…?」
何度かノックをしてみるも、返事がない。
扉に手をかけると、静かに開いた。
「開いてる…。…失礼します…」
恐る恐る入ると、窓も開いていて、扉の近くに居るデンゼルからもベランダ越しにグランドが見えた。
「確かこの辺に…」
ちゃんと謝るつもりだが、先にボールは見つけておきたかった。
ベランダに出ようとした時に後ろから声をかけられた。
「犯人、現場に戻る。本当にあるんだね、こういうこと。」
驚いて振り返ると、保健室の主がニコニコしながら立っていた。
「あ…ごめんなさい。ボールを勢いよく蹴ったらこっちに飛んできちゃって…」
両手をモジモジといじりながら謝り、罪悪感から視線を合わせられずに下を見た。
「あ…。」
足元に割れた鉢植えと、少しへたれた様子のヒマワリを見つけた。