小説2

□For example...
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たとえば俺が、たまらなく美味しい物を食べたとする。

すると俺は『君にも食べさせてやりたかったなぁ』と必ず後悔する。
そして、もっとその食べ物について調べて、次こそは絶対君に食べさせてあげようと強く決心するだろう。



たとえば俺が、大きな災害に怯えたとする。

一歩間違えば生と死の境に面する、そんな命の危険に及ぶような大きな災害だったとして、
まず俺は『あいつの方は大丈夫なのか』と考える。
会って話せたら、やっと安心できる。
それでもし、向こうも俺の事を心配してくれていたと知ったら俺は優しい笑顔で愛を囁くだろう。
「ありがとう」って言って、優しく頭を撫でて、頬にキスするだろう。



たとえば俺が、将来について、自分の進むべき道について真剣に考えたとする。

俺が考える『進路』とか、『将来』だとかには必ず君が隣に居て、
君とあれがしたいとか、君とあれを見たいとか、君とあの話をしたいとか、一緒にたくさんの思い出をつくって、最終的には幸せな家族として一緒に暮らしたいとか、そういう事ばかり。

もしかしたら俺の『将来の夢』っていうのは、君とずっと一緒に居れたら何でもいいのかもしれない。
君と共に暮らす事自体が俺の夢なんだから、もうそれ以外は何だって構わないんだ。



たとえば俺が、君を見失ったとする。
引っ越した、愛想を尽かした、死んだ、何でもいい。
とにかく、俺の目の届く範囲から君が居なくなったとする。

すると俺はどうなるだろう。
――誠に不思議ながら、まったくこれっぽっちも想像できないんだ。
君が居ることは俺の人生の前提なのだから、その前提が覆された場合なんて想像したことがないし、できる気がしない。
ただ、……出逢ったことを後悔することはないだろう。
どんなに独りが寂しくとも、どんなに部屋が広く感じようとも、どんなに布団の中の温度が冷たく感じようと、どんなに外で手が冷たかろうと、どんなに思い出が薄れていこうと、幸せだった頃を否定することは絶対にないと思えるんだ。

君が居ないという現実を見るのは怖い。
でも、君が俺に笑いかけたあの頃を忘れるのはもっと怖い。
だから俺はきっと、恐れながらも、ゆっくりと現実を見つめ、思い出を大切に守り抜くだろう。



たとえば俺が、君に「好きだ」と言ったとする。

すると君は恥ずかしがって、顔を真っ赤にするだろう。
そして、ぶっきらぼうに「…俺も…」と呟くんだ。


たとえば俺が、君に「好きだ」と言われたとする。
すると俺は一瞬驚いて、何も言えなくなるだろう。
そして、あたたかい目で君を見つめて「俺もだよ」と言うんだ。


君の好きと俺の好きは等価で、一緒に居るときに緊張する気持ちも同じ。
同じで、類似で、酷似。
君と俺はむしろ同一なんだよ。



――そういう事なんだ。

俺の未来には当たり前に、前提として、シズちゃんの存在があって、
だからそれがなければ、最早俺の人生ではない。
君は、もう既に俺の一部なのだから。
君が欠けてしまえばもう俺は俺でなくなってしまうから。


例えるならば、そう、君は心臓。

俺をつくり、俺を支え、何をするにも一緒で、俺の何もかもを知ってる、そんな存在。
君が居るから俺の血液は循環していて、
君が居るから俺は呼吸できていて、
君が居るから俺は生きている。

俺達はそういう関係なんだ。





――だから、

たとえば君が、今目の前に居れば。


「わっ、なんだよ急に…!」
「べっつにー。」


俺は衝動的に抱きしめたくなると思う。



――俺もまた、君の心臓として生きているのだから。




For example...
(たとえば、なんて事言わなくても結果は分かってる。)
(俺達が相思相愛だってことぐらい。)













〈あとがき〉

ぬーん…、上手くまとめられてない気がする……。
進路のこと考えてたら思いついて、衝動的に書いた。
こんなに制作時間短かったのは久しぶりだったなぁー。
どんどん指が進んで、どんどん書きたいことが頭に浮かんだ。
久々に私の指の動きが凄まじかったっすよ…(笑)






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