小説2

□これでもう君は泪を流せない
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彼は俺の顔に触れた。
壊さないようにと、優しく、淡く、儚く。

「…なんでてめーが泣いてんだ?」

彼は人差し指で俺の涙をすくい取った。
…俺、泣いてたのか。

「そんなことない。……無様な君の姿を見て笑ってるさ」
「嘘つくな。声が揺れてるし、目元が濡れてた。それに何より、お前が今の俺を見たら絶対泣くと思ってたからな」

彼が言うその情報に視覚情報は存在しない。
だがそれは当たり前だ。


――今の彼は目が見えないのだから。


「言っておくが、俺は気にしてないし、全然平気だ。むしろありがたく思ってる。お前が居なきゃこの程度で済まなかっただろうからな」

この状況でも俺を励まそうとしているだなんて。
…本当になんて馬鹿なんだろう。
平気だなんて全くの嘘なのだろう。
顔はやつれ、目の下には大きな隈ができている。
いつもは正直な癖に、人を悲しませない為の嘘なら平気で吐くんだから。
…ほんと、馬鹿で優しい奴。
俺なんかのために無理しなくてもいいのに。

「違うよ、シズちゃん」

言葉を吐き出す。
…何なんだろう、この感情は。
罪悪感?焦燥感?後悔?混乱?
何なんだ、この心情の根底から湧き上がるモヤモヤ。


「……俺は…、何もできなかった」


――いや、むしろ。

彼の目を奪ったのは、――この俺なのだから。







〈あとがき〉

えっ、終わり!? …ていう。
えぇ、終わりですとも。←開き直り
書き始めたはいいものの、絶対書ききらないと確信した。
だってシズちゃん辛すぎるしー!!
可哀想すぎて書きたくないー!!と思った。
シズちゃんの眼はいつも臨也さんを見つめててください。うんうん。






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