小説

□いいんですか?
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・radwimpsの『いいんですか?』パロです
・ちょっとだけ変えました
最終更新→11.03.04

こちらに提出いたしました。
↓↓↓
かっこいい弱虫









此処は…どこなんだろう?
一面真っ白な世界。
雪か?いや、花?壁も天井も無い広々とした世界。
よく分からないがなんだかふわふわしててすごく心地良い。

そして目の前には金髪の青年が立っていた。
――…シズちゃん?


「臨也」
シズちゃんは日頃滅多に見せない優しい笑顔で俺の名を呼ぶ。
「お前、言いたいことがあるんだろう?」

…なんの事だろう?
でも確かに何か言いたい事があった気がする。
そうだ。言わなきゃ。
今までずっと言えてなかった事。
勇気をださなきゃ…

「ずっと…………、ずっとね?シズちゃんに聞きたかった事があるんだよ。
それを言うにはすごく勇気がいるから、全然言えなかったんだ。」

「…言ってみろよ」

俺は目を閉じてゆっくりと言葉を選びながら話す。

「………ねぇ…、いいの…?愛してもいいの……?
俺はこんなに幸せでいいの……?
俺は今までシズちゃんを傷つけてきた張本人なのに…
俺にはこんな幸せを受け取るような権利ないんじゃないかなぁ……?
俺は本当に、君を愛したままでいいの…?」

『―――……。』

「今まで俺は君を何回泣かせたんだろう…。
それに比べて何回笑わせてあげれたんだろう…。
今までひどい事ばかりしてきたね。
きっと沢山悲しませたよね。ごめんね。
人をどうやって大事にすればいいか分からなかったんだよ。
ごめんね。
ごめんね。
ごめんね。
愛してる。」

『いいよ』

「……今の声…?」
さっきのシズちゃんとは違う声が聞こえて、目を開く。
そこにはシズちゃんの姿はなかった。
「シズちゃん……?」
「続けろ」
何処からかシズちゃんの声がしたので、また俺は落ち着いて話し始める。
目の前には居ないのに、何故か見守られている気がしてすごく安心できた。

「シズちゃんは言ったね。謝りすぎるな、って。
ちゃんと謝るのはエライけど、『ごめん』より『ありがとう』を使え、って。
それを言われた俺はまた謝っちゃって、また君は言ったね。

今まで謝ってきた分、感謝しろ。
そして同じ回数だけ『ありがとう』と『ごめんね』を言え。
そしたら『ありがとう』の勝ちはもう間違いないだろ?
最後の瞬間をむかえた時にありがとうの一言を言えば…それでいいだろ?

…なんてさ。
柄にもなく真剣な事話しちゃって。
でも…嬉しかったよ。」

『ありがと』

「………?」

さっきと同様にどこからか聞こえる声。
俺は話を続けた。

「君といる意味を探したら、明日を生きる答えになったんだ。
明日を生きる意味を探したら、君といる答えになったんだ。
…つまりさ、君が居ないと俺は止まっちゃう気がするんだよ。
君が背中を押してくれるから、
見守っていてくれるから、
そばにいてくれるから、
俺は生きていけてる気がするんだよ。」

「ありがとね、シズちゃん。」

『そばにいてくれてありがとう』

何処からか心地良い声がする。
俺が愛しているあの意地っ張りな、でも優しい声。
自然に俺の頬は綻んでいた。

「…ねぇ、俺はシズちゃんを愛していいのかなぁ?」

おもむろに目を開きながら問いかけた。
答えを聞くのは少しだけ恐い気がする。
だけどなんだか…
聞かなきゃ勿体無い予感がする。


『………いいよ』

優しい声。
真っ白な空間に薄く、広く伸びていくような感覚がした。
木霊するその声に包まれていくような錯覚に陥る。
手を伸ばせばすぐに掴み取れそうな、
ずっと近くに居られるような……
でもきっと此処は…
只の『幻想の世界』。


















「…………ん」
身を捩るとぼんやりと白い天井が見えた。
いや…金色?
此処は…………

「臨也…痛ぇ」
「ん、シズちゃ、ん…?」
愛しい声がして、ゆっくりと意識を覚醒させて行く。
え?『痛い』?

ゆっくりと視線を下げると、俺の手がシズちゃんの頭を鷲掴みにしていた。

「うわぁぁ!ご、ごめん!!寝ぼけてた!」
「………いいけど。」
ぶっきらぼうにそれだけ言ったシズちゃんは立ち上がり、リビングへと歩いて行った。
俺はソファに座るシズちゃんの太股を枕にして眠っていたようだ。
てことはさっき見た金色はシズちゃんの髪?
あぁ、なるほど。
まだ頭がぼーっとしていつも通り脳内が働かない。

…あれ?さっき夢見てた気が……
……え、何、夢オチ!?
…でもそれにしてはハッキリと耳に残ってる気が…

立ち上がったシズちゃんの後ろ姿を見て様々な可能性を考える。
「ん?」
…そして俺は一つの推理に辿り着いた。

「シズちゃん」
「!!!…っな、なんだ…?」
シズちゃんの顔に向かって指を指し、出来るだけ冷静な声で言う。

「顔赤い。」
「えッ!!?」
顔を挟むように頬に手をやるシズちゃん。
なんか可愛いなー

俺は再び追究を続ける。
「ねぇ、もしかしてさ。俺寝言言ってた?」
「へ…っ、な、何のことだ?」
思いきり嘘ついてるね。
「ふーん」

そんな事を言いながらも俺は推理を確信に変えていった。
つまりこういう事。

俺は夢に魘されて呟いていたのだろう。
『愛してもいいの?』と。

そして俺が夢の中で聞いた声は実際にシズちゃんが口にしていた声だったのだろう。
それでシズちゃんは恥ずかしくなって頬を染めている、と。

「……カワイ。」
「あ?」

池袋で噂される『喧嘩人形』に対する感想としては間違っているのかもしれない。
だけど、目の前にいる人間は他の人間とは何かが違っていて、
比べられないくらいに愛しい。

だからこそ俺は戸惑ってしまうんだろうな……

「ねぇシズちゃん…」
シズちゃんの体を後ろから抱き締めると、肩が大袈裟なくらいにビクリと震えた。

「…っな、んだよ…」
「あのさ…今の環境は俺には幸せすぎて釣り合わないよ。
シズちゃんに毎日会って、毎日話して…
これが当たり前になっていくのが恐い気がする。」
「……」

シズちゃんは急に真剣になって、哀しげな表情をした。
今君は何を考えているのかな?
君は俺を許してくれるのかな…?


「ねぇ、もう一度聞くね。愛しても…いいの?」

人に愛された事なんてなくて、
人を『本当に』好きになるのをやめた俺が、
誰かを素直に愛せている。
そんな幸せすぎる空間がただ勿体なくて、
こんなに幸せに包まれていいのか不安で、心配で…

何もかもすべて要らなくなってて、
でもいつのまにか君を求めていて、
もう止められなかった。
矛盾した感情。
でもどちらもが本当だった。

真っ白な君にこんな真っ黒な俺が触れたら、
透明で、真っ直ぐで、脆い君は崩れてしまうだろう?
触れたくて、近づきたくて、恐くて、汚したくなくて……

俺はどうすればいい?
本当の気持ちはどこ?
望むべき未来はなに?

分からないんだ。
君は答えを知っている?
問題の答えを教えてよ…

いや、
俺の願いに対する応えを…

手に入れてはいけないと思っていても、
すごく欲しくて、欲しくて、欲しくて、欲しくてたまらなかった。
手を伸ばせばすぐに掴める距離だった。
それなのに、最後の一歩が踏み出せなくて…

正面に回って顔をじっと見つめればみるみる赤くなっていくシズちゃんの顔。
俯きながら横を向いてるけど、俺の方が背が低いのだから丸見えだ。
よく見れば唇が震えてる。
緊張してるんだろうな…



「…………………………………………………いっ…いいに決まってんだろ…」

ぼそりと呟かれたシズちゃんの声は、確かに俺を受け入れる言葉だった。
……え………………?
只の幻想の世界じゃ…なかった?

「………………ッ…!」

くそっ…鼻の奥がツンとして痛い。
視界が歪んでる。
泣いちゃいけない。
嬉しいのに…!!
下唇を思い切り噛みしめる。


君は…
君は僕を受け入れてくれるんだね?

「……あり、っがと」

自然に冷たい滴が零れていく。
ぼろぼろぼろぼろと、気持ちと共に溢れ出して…
もう頭の中なんてグチャグチャだ…。

涙が零れるのを気にもしないで微笑むと心底驚いた表情で見られた。

「臨也、お前…」

心外だなぁ。
俺だって泣くときぐらいあるってば。
……君の前でだけだけど。
思わずきつく体を抱き締める。

「…愛してくれてありがとう。
愛させてくれてありがとう。
そばにいてくれてありがとう。………愛してる。」
「……………俺、も…//」

俺の濡れた頬はあたたかかった気がした。

笑い声が聞こえる
祝福のファンファーレが聞こえる
手拍子が聞こえる
花が見える
光が見える

優しい君の声がする


すべてが実際にある訳じゃないけど、
今の俺には幸せすぎる現在がそんな風に見えて…

とにかくこれは現実なんだと気づかせてほしいから、君に触れさせて?

ちゅっ

「な……っ!!!??」
「ねえシズちゃん…愛する為の許可をちょうだい?」

俺の口から発された声は夢の中の時よりも自信に溢れていた気がした。



「俺が選んだ人ならば、いいんでしょう?」


「(むしろ俺はそうであってほしい………)なんて言わねぇけどな!!!!」








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