小説

□今、声、繋ぐ
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話は一日前に遡る。

俺に恨みを持つ馬鹿な人間達に取り囲まれた。
ホント、馬鹿だなぁ…。
俺がシズちゃんと戦って生き延びて来てるって事ちゃんと理解してんのかな。
シズちゃんと戦うのが普通の人間なら、すぐ死んじゃうよ?

でもさすがに…敵の量が多すぎるか…

二十歳そこそこの若い男達が約5、60人程。
きっと何かのグループなのだろうが、覚えていない。
不必要な情報はすぐに忘れるのが情報屋をやっていくコツだし。

「ちょっと大人しくしろよ」
「なっ……!」

その後俺は体を捕まえられ、変な薬を飲まされてしまった。
「―――…ッッ!!!」

喉の奥に粉末が入っていくのが分かる。
体はまだちゃんと動くし、今の所何も害は無い。
なんの薬なんだ…?

くそ…癪に障るが、ここまで追い詰められたら逃げるしか無いか…

ダッ
「あっ、待て!!追えッ!!!!」


はぁ…なんか喉痛、い…

「……………」

え?俺…今……??

「…………っ…」

声、出そうとしてるよね…?

「――………」

自問自答を繰り返しても口から出るのは息の音だけ。

何で……?


新羅の所に慌てて行った。

とりあえず、セルティを見習い筆談で事情を話した。
その後、新羅は心配した様子で様々な検査をしてくれた。

すると、新羅は言いにくそうにこう告げた。

「残念だけど…臨也の声は一生……―――」

そこまでしか聞こえなかった。
いや、自分が聞きたくなかっただけかもしれない。

ただ、なんとなく理解した。


俺が誰かに気持ちを伝える手段は、もう無いんだ。






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