小説

□俺だけを愛して
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・臨也の事が好きなんだと気づき始めたところ
・ただ、自分を特別に思ってほしい
・ただそれだけのまっすぐで複雑な感情




1月
冷たい風が遠慮無しに吹き乱れ誰もが寒さに体を震わせていた。
温もりを求め、慌てて屋内に走り込んで行く者が幾人も居る。

そんな中、周りの人の行動など気にも止めずただ歩道の端に立ち尽くす者が1人。

紫煙が立ち上る、その場所に居るのは長身で金髪の男…
平和島静雄である。

「…寒ぃ」
寒さを感じながらも彼はいつまでもそこに立っていた。
携帯灰皿の中はどんどん吸い殻が入れられていく。

誰かを待っている訳ではない。
寧ろ、此処には用事はない。
ただ彼は、独りきりになって考えたい事があっただけなのである。

胸の中にある思いは、
不安?焦燥?恋慕?欲望?疑念?
本人にも言い表せない感情がぐちゃぐちゃと渦巻いていた。

ただその想いの中に確かに存在する人物、
「…チッ…あの野郎…」

――折原臨也である。

何をされた訳でも、言われた訳でも無い。
強いて言うならば、いつものように池袋に現れた臨也に喧嘩を売り、大騒ぎになった。

…そんないつも通りの事が起こっただけ。

だがそれも昨夜の事。昨夜から静雄はずっと考えていたのだ。

――いつも通り臨也を追いかけていた静雄は何故か違和感を感じた。

(なぜ俺はあの時感情的になった?なぜ自ら殴りかかって行った?)
(確かに濡れ衣着せられた事はまだムカつくが、もう仕事はあるし、ていうか仕事中だったのに……)

(というか臨也は俺に気づいてなかった。あの時点ではちょっかいもかけて来てなかったし…)
(少しは自分の力にブレーキをかける事が出来るようになった筈だ)
(だけどあいつが相手だと…)
(ブレーキなんて……、畜生…)
(というか何故俺はこんなに違和感を感じた?何故こんなに考えている?)
(昨日の晩からずっと…なんで俺が一日中あいつの事なんか考えなきゃなんねぇんだよ!!)
(あぁ、頭痛ぇ…慣れねぇ考え事なんかしなきゃ良かった)

「………チッ」
入りきらなくなった携帯灰皿を見て舌打ちを打った

(冷えてきたし…帰るか。)


本当は…多分分かってるんだ。
…この気持ちの正体。

ムカつくけど…多分そうなんだろう?


一度だけ感じた事がある。

離れたくないという想い。
…それは小学生の頃に感じたもの

守りたくて、その人に特別に思われたくて、愛してると言ってほしくて…

当時の俺にもこの気持ちの正体は分かった
『俺はこの人に恋をしているんだ』と。

俺は多分…臨也にそういう…
その、恋…みたいな感情を抱いているようだ。

自分でもよく分からないが。


「だぁぁぁっ!めんどくせぇ!!なんでいちいち俺が考え事なんかしなきゃなんねぇんだ!」

ガードレールをガンッと蹴り、叫ぶ。

(――…決めた。このままの気持ちを一回言ってみよう。)

その気持ちを恋と呼ぶにはまだ早い気がした。
だからこそ、このよく分からないぐちゃぐちゃを臨也にぶつけよう…

静雄はそう決心した。

決心を確認するように小さく呟く。
「次会ったとき…絶対言う…」


静雄の自宅の前に着く

「寒ぃ…早く中に…」
玄関に近づいて行くと…

(人影?)
近づき、相手が誰か見定める

「やぁシズちゃん!…ちょっと家あがらしてくんない?」

「……は?」


さぁ、せっかく決心したとこだし

吐き気がするほど気持ちが悪いこの感情を

言ってやろうか



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