(drrr!! 静臨)

□本気の『愛』を伝えたい
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自分で言うのも何だが、
多分俺はあまり愛を知らないと思う


昔から俺は誰かを好きになったりしなかった。

もちろん彼女だって欲しかった。
友達ももっと欲しかった。
だけど誰も好きになれなかった。

誰も俺の怪力を恐れて近寄らなかったし、
だから誰とも両想いになれない事が分かっていた。

もし誰かと想い合えたところで、いつか離れてしまう時が来るのだろう

そんなの悲しすぎる。
寂しすぎる。

その原因が自分の力にあるのならば、余計に。

『あの時のように?…―――』
思い出すたび目が熱くなる。
壊れた店の中。倒れたたくさんの人達。その中に埋もれた大切な人。


もう何も失いたくない

だから何も得たくない

幸せさえ知らなければ

自分が不幸とは気づかない

「…だから、それでいいんだ。」


中学の頃の俺はそうやって自分に気持ちを押し付けて、
楽な方へと逃げていた


―――そして高校で臨也と出会った。

あいつは俺と何もかもが違った

だけど心の奥で思っている事は全く同じ
…な気がした。

あいつは人が好きだと言う

俺が15年間以上一度も言えなかった事を、
毎日のように、容易く、当たり前のように
「好き」と言う。

正反対なんだ。

何も言えなかった俺
散々言っているお前

全く逆の行動をとったけど、その理由は全く同じ


『誰かに愛されたかった』

たったそれだけの小さな願い。

愛される事はどれだけ幸せなんだろう

好きと言われるとどんな気持ちになるんだろう

そして、
愛してると本気で言えるのはどれだけ気分が良いんだろう

…と。そんな想像だけをして生きて来た

そして俺達は、
嫌われたくないから好きにならず、
好きになってほしいから愛を語った。

俺からすれば、今までの人生は孤独で、独りぼっちで、寂しすぎた。


お前も一緒なんだろ?


でも俺はお前から学べたんだよ

『言わないと始まらない事がある』って。

だから伝えるんだ。
だからそばに行くんだ。

そんなお前だから愛してるんだ。


お前に足りない愛は俺が満たしてやるんだ。







♀♂







「ずちゃ…シズちゃん…?」
「へっ!!」
パッと顔を上げると臨也がすごく近くに居た

「さっきから何回も呼んでんだけど」
「あ、あぁ…すまん」
「何?ヤりすぎて頭おかしくなっちゃった?」
「ち、違ぇよ!つかそういう事普通に言うなっ!!//」
普通にとんでもない事を言う臨也に突っ込んで、さっき考えていた事を考え直す

「……なぁ、臨也」
「ん?何?」
「もし…もしさ、俺が…………」
「…?」
なかなか話し始めない俺を見て不思議そうに顔を傾げる臨也

…でも俺はなかなか言い出せなかった

「えっと…もし、もしもの話な?」
「分かったから早く話してよ」
「…………もし…俺が死んだら、臨也はどうすんだ…?」
「……」

―――沈黙。

「ごめん、何でもな…」
「させない」

俺の取り消そうとする声は、臨也の声に潰された
「…え?」
「絶対させないよ、そんな事。」
座っていた臨也は立ち上がり俺の前で仁王立ちした

「シズちゃんを殺すのは俺なの。なんか関係変わったけど、それは変わんないの。分かる?だから、」
「??」

臨也が顔を近づける

ちゅっ

「Σ!?//」
「…だから、シズちゃんが死ぬギリギリまで…お、俺は…隣に居るのっ!」


あぁ、

俺はお前になら殺されても良い気がする。

「………でも…臨也と長く一緒に居たいから、ちゃんと…生きとく。」
「…うん。まぁ…そうしたければそうすれば?」

本当不器用ってか、
素直じゃねぇってか…

「臨也、大好きだよ。」
「…シズちゃんよくそんな事言えるよね//」
「お前が言ってたからこうなったんだけどな。」
「?」
「ふふっ……何でもねぇよ。」

思わず顔がゆるんだ。
それにつられて臨也もクスリと笑った。

そして俺は思った

多分俺はいま、
すごく気分が良い。




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