鋼の錬金術師短編夢

□やきもち
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『アル、お前に客人だけど・・・どうする?』

「ボクに・・・?」

『メイだぞ、見舞いに来たそうだ』

「うん、大丈夫だよ・・・入ってもらって・・・」


一昨日も昨日も休んじゃったし、わざわざきてもらって悪い事しちゃったな・・・

取りあえず寝転がったままなのもあれだから、身体を起こして枕を背もたれにして座った。

姉さんが一旦扉を閉じて、また玄関から聞こえる話し声。

再度扉が開き、メイが顔を出した。

カノンはリンゴ持ってくるって言ってそのまま扉を閉めた。


「お加減どうですカ?アルフォンス様・・・」

「うん、昨日よりはだいぶ良いよ。ごめんね何日も休んじゃって」

「そんな!気になさらないで今はゆっくり休んで下さいネ!」

「メイは優しいね、ありがと・・・」

「ア・・・アルフォンス様・・・」


心配して家まで尋ねてくれるなんてほんとに優しい子だよね、メイって。

暫くするとカノンが戻ってきた。

その手にはプレートの上に乗せられた小さな器。

あ、リンゴ擦ってきてくれるって言ってたっけ・・・


『アル、食べれるか?』

「薬飲みたいし食べるよ・・・ありがと姉さん・・・」


カノンからその器を受け取ろうとした時だ、その器がボクの手に触れることなくカノンの手から消えた。

あれ?ボク落とした・・・?


「カノンさん、それでしたら私ガ!」


違った・・・

気がつけばその器はメイの手の中に納まっていた。

それより"私が"って何?


「はい、どうぞアルフォンス様!」


そういってボクの口元に差し出された一掬いのリンゴ。

・・・いやいやちょっと待って、流石にそれは・・・


「メ、メイ・・・自分で食べられるから・・・大丈夫だよ」


メイの手の中の器に手を伸ばすが避けられてしまった。


「ダメです!アルフォンス様はご病気なんですかラ!
大人しくなさっててくださイ!はい、どうゾ」


再度差し出されるスプーンにボクは固まる。

でも多分・・・拒んでもきいてくれないんだろうな・・・なんて思いながら、仕方なくそれを口に含んだ。

カノンが見てるし、なんとなく気まずい・・・

分かってるけどさ、カノンの事だからこれくらい気にもならないって・・・


『・・・・薬の用意でもしてくるか』

「はい、こちらはお任せくださイ!」

『あ・・・あぁ・・・すまんなメイ』


静かに閉められた扉を見て、すこし寂しくなった。

結局メイから口に運ばれるリンゴをようやく食べきったけど、カノンが戻ってこない。

薬何処に片付けたか分からなくなった・・・なんてこと姉さんに限ってありえないし、もしそうだとしてもすぐ調合して持ってきてくれるはず。

どうしたのかと考えていると扉が開いた。

カノンの手にはコップと顆粒の薬が一包。


『すまん遅くなったな』

「ううん、今食べ終わったとこだし大丈夫だよ」


薬を受け取ってありがとうと笑うけれど、いつもなら笑い返してくれるカノンが何故か無表情。

薬取ってくるのにも随分時間かかってたし・・・どうしたんだろう・・

もしかして風邪うつっちゃったのかな・・・体調悪い・・・?


『何か暖かいものでも淹れてこよう』

「あ、それでしたラ!風邪の時に良い飲み物があるんでス!
私アルフォンス様に作って差し上げたいでス!カノンさん、台所お借りしても良いでしょうカ?」

『・・・あぁ、かまわないよ、こっちだ』

「はい!アルフォンス様!ちょっと待っててくださいネ!!」

「う・・・うん」


そう言って部屋を出て行く二人を見つめてた。

でもなんだろう、カノンのいつもと違う様子に違和感を感じずにいられなかった。
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