鋼の錬金術師短編夢
□変わる立ち位置
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「なぁ・・・アル・・・」
「な・・・何?兄さん・・・」
何故か怒気の篭る兄の低い不機嫌な声に、アルフォンスは息を呑む。
今の会話の中の何処にそんな要素があったのかと不思議になるが、エドワードから発せられた台詞に納得する。
「姉貴・・・また大量にプレゼントとか押し付けられるんじゃねぇ・・・?」
「あぁ・・・ありそうだねそれ・・・」
そういうアルフォンスの声にも怒気が混じり始める。
兄弟2人して青筋を浮かべ、来る姉の誕生日の様子を思いイライラを隠せないでいた。
そんな黒い空気が渦巻く食卓で、アルフォンスが呟くように爆弾を投下した。
「ねぇ兄さん・・・姉さんに告白しちゃわない・・?」
「・・・・・は?」
エドワードはアルフォンスが何を言ってるのか分からなかった。
だがアルフォンスはそんなエドワードをほっといて自分で納得して話を進めていく。
「うん、そうだよ・・・恋人が出来ちゃえば虫除けになるよね・・・」
「こっ・・・・恋人!?」
流石にそこまで聞くとやっと弟の言う告白の意味がわかったエドワードは途端に顔を赤く染め始める。
そんな兄を見ながら、何を今更と言うようにアルフォンスは平然と話を続ける。
「うん、だってフリーだから変な虫が寄ってくるんじゃない?」
「そ・・・それはそうかもだけど、告白って・・・お前・・・」
「え?だって兄さんも好きでしょ?姉さんの事。」
「オレ・・・は・・・・」
エドワードの顔の熱がどんどん上昇していき、なかなか言葉が出てこない。
「何でお前はそんな平然と・・・」
「兄さんが無駄に純情すぎるの。じゃあ何?兄さんは姉弟として好きなだけなの?」
「いや・・・でも・・・姉貴・・・なんだぞ?」
「分かってるよそんな事。兄弟としての姉さんも勿論大好きだし大事だけど、あんなに両手広げてボクらの事大事にしてくれてる人だよ?
一人の人間として好きになってもおかしくないじゃない
これは言いたく無いけど、血は繋がってないんだから結婚するのにも問題ないんだよ?」
「それ・・・・は、そうかも・・しれねぇけど・・・」
「・・・はっきりしないなぁ兄さんは、姉さんか誰かに持ってかれちゃっても良いの?」
「いや、それは許さん!」
「ほらもう認めなよ兄さん、ボクも兄さんも、姉さんを1人の女性として好き。そうでしょ?」
もはや茹蛸のごとく赤く染まりあがったエドワードの顔は肯定と受け取っていいだろう。
本人も否定する様子はない、ただやはり不安も隠せないのも事実である。
もしカノンが自分たちの事はやはり唯の弟としてしか見ていなければ、今のこの関係すらも壊れる気がして・・・
「多分ビックリはするだろうけどね、でもあの姉さんだから拒絶されたりなんてないと思う。
まぁ、弟としか思えないっていわれる可能性は無くないけどさ。
だけどボクね、兄さん以外の人に姉さんを・・・カノンを譲る気はないよ」
エドワードの考えていた不安を分かっているように、強く言い切るアルフォンスに自分も覚悟を決めた。
「・・・あぁ、そうだな・・・」
「それにさ!昔はどう見てもお姉さんと弟って感じだったけど、今はもうそんな事無いと思わない?」
「・・・あ?どういう・・・」
「ボク達2人とも、もう姉さんより身長高くなっちゃったね」
「・・・・まさか姉貴を見下ろす日が来るとはなぁ?」
「ね、並んでももう引けを取らないよね?きっと!」
目を合わせ笑いあって、自分達以外に誰もいない家なのに内緒話をするように顔を寄せ合って囁きあい、お互いの決心を確認した。