鋼の錬金術師短編夢
□Happy Valentine
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「まったく残業とは、骨が折れるな・・・」
東方司令部・・・
ロイは一人、静かな執務室で呟いた。
外は既に明かりが落ち、空は闇に包まれ点々と星が瞬いている
早く終わらせて帰りたくもあるが、その大量の書類がそうさせてはくれなさそうだ
帰宅は間違いなく深夜を過ぎるだろうと、大きな溜息をつく、その時だ
"コンコン"と戸を叩く音が耳に届き、『入れ』と許可を出し開かれた扉・・・
そこから顔を覗かせた人物に、ロイは驚きを隠せなかった
「カノン!?」
「お邪魔するよ、ロイ久しぶりだな!」
カノン・エルリック。
少し前まで同じく軍に所属していたが、エルリック兄弟の身体が元に戻った後は軍を辞め、医師として自分の病院を営んでいる。
軍に所在がなくなったことから、そしてロイ自身も中将という立場からなかなか会いに行く事は出来ず・・・
簡単な話、あの大きな戦いの後から一度も会う事が無かったのだ
「驚いた・・・どうしたんだカノン、何故ここに・・・?」
「はは、門番や受付にいた人は私の事をまだ覚えていてくれたようでな。
ロイに会いたいのだといったらすんなり通してくれたよ、良いのか?
部外者がこんな簡単に将校の部屋に来れてしまって・・・」
言いながらもクスクスと笑っていて、その顔から悪い事をしているという色は伺えない。
本来なら軍の、しかも将校の部屋に一般人を通すなんてありえない事だが、そこは流石カノンと言った所だろうか。
軍に所属している間は准将という立場にあり、もともとここ東方司令部に所在を置いていた。
たとえ軍を辞めたからといっても、下位の軍人がそんな彼女を無下に扱う事などできるわけが無い
「何、他の者ならまだしもカノンだからな。歓迎はしても追い返すものなど新人以外は居ないだろう。
まぁ・・・もし君にそんな事をする輩が居れば私が消し炭にするがね?」
「そう言うな、本来なら追い返されるのが当然なんだからな」
笑いあいながらも二人でソファーへと腰掛ける。
カノンが持っていた荷物を置いた瞬間だ・・・
その身体はロイによって抱きしめられ、身動きをとる事が出来なくなっていた。