鋼の錬金術師長編夢

□脱獄
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「馬鹿なっ!何故マリアが!?」



ロイによって聞かされた事・・・あまりの事に驚くより怒りの方が勝ってしまっている・・・
それはヒューズ殺害事件の犯人がマリア・ロス少尉であり、重要参考人として聴取を受けているという事だった。

カノンは前にセントラルに来たときに少尉に会っている。

明るくてハキハキとした素直な女性・・・そんな記憶・・・



「カノンは彼女と面識があるのか」

「あぁ、スカーの事件の後中央を訪れたときに、デニーと共にエドの護衛についてもらった事がある・・・」



カノンはリザに渡されたその事柄の資料を捲りながら頭をフル回転させた・・・

軍内でヒューズが攻撃された事・・・確かにソレは軍内にホムンクルス側へと内通しているものが居るという事かもしれない。

なにより国の・・・軍のトップがホムンクルスなのだ。

軍内部に・・・ホムンクルスではないが、向こう側についているものが居てもおかしくはない。

だが、もしあのロス少尉がそうなのであれば、あの時第五研究所の話が持ち上がった時点でエドワード達を研究所へと行かせないよう足止めをしていたはずだ。

手元の資料を見る限りでは確かに条件は揃っているかもしれない・・・だがだからこそ、検挙しようと思えばもっと早くに動けていたはずだ。

何故このタイミングでロス少尉の名があがったのか・・・

そこでカノンが行き着いたのは一つの答え・・・

ヒューズが殺されかけた理由は"賢者の石"に係わる事で・・・かつホムンクルス側が隠したい事柄がそこにある・・・

とすればヒューズの直前の行動や資料室で手に取った資料等を探ればその答えに行き着けるかもしれないという事・・・

犯人が捕まれば理由を探る必要もなくなる・・・つまりはヒューズのことを調べている人物への餌・・・

もしくはロス少尉がソレを調べていて口封じに・・・とも考えられなくはない。

だがそこでより気になったのは今自分の横に座る人物の存在・・・

そう、なんだかんだで情に脆く強い優しさを持ち合わせた者・・・



「ロイ、一つ聞くが・・・お前、あれからヒューズの事件を嗅ぎまわったりは・・・?」

「・・・・っ!」



沈黙は肯定・・・、それにロイの表情からもソレがありありと見て取れた・・・

今までは東部に居たからこそ行動に移せなかったが、中央に移動になりそれが叶ったといったところだろう・・・

ロス少尉はロイに向けて吊り下げられた餌なのだという確信・・・、そしてロイとその周辺の者達であれば、間違いなくホムンクルス側につくという事はありえない・・・それは今更言うまでもない事。



「私の考えが確かなら・・・恐らく明日にでも犯人断定と新聞あたりに大々的に乗るだろうな・・・」

「何・・・どういうことだカノン、ロス少尉は捕らえられたばかりだ。いくらなんでも早すぎる」

「あぁ早すぎる・・・、でもだからこそ・・・ソレが現実になったとしたら・・・」



絡み合う視線に引き締まった表情・・・

ソレが何を意味するのかロイも分かったようで、無言のまま正面に向き直った




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