鋼の錬金術師長編夢
□悲涙
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カノンは弟達の後を追うため、再度南行きの汽車に揺られていた・・・
もう間もなく大好きな弟達に会えるにもかかわらず、その表情は沈んでいる・・・
それもそうだ、あんな現実を突きつけられたのだから・・・
頭の中をめぐるはずっとその事ばかり。
人形兵器の事だけではない、鎧の身体のアルフォンスをいつでも別の身体へと移し変えられるようにと始めた魂の研究・・・
そしてその為の身体をの構成する人体の研究・・・
ブラッドレイの言った事を全て事実と受け止めるならば、あのデビルズネストで出会ったキメラ達も。
そして第五研究所で見た魂だけの鎧の者達も・・・
全てが自分の研究の所為という事になる。
自分の研究書が出される前もその研究自体は行われていたのだろうが、自分の研究が元で成功例が増えたと言った・・・
つまり軍の・・・否、ホムンクルス側へ都合のいい駒が大量に作られる事に加担したのは逃れられない事実となる。
そう・・・人道を無視した非道な実験を後押ししたという事実・・・
否定したいがそう出来ない現実に、弟達の下へ向かう足取りが重くなっていた・・・
自分の所為で起こった事・・・それで弟達に嫌われたのならばそれは自分の所為だ、仕方が無い。
けれど、それを全て隠して今まで通り弟達の下に居ていいのだろうかと・・・
考えれば考えるほど深みにはまってゆく・・・が、ここで足を止めれば・・・急に弟達への態度を変えたりすれば・・・
それこそ一番望まない結果を呼んでしまう事になりかねない。
思うところはいろいろある・・・それに医師としては最低の考えかもしれない・・・
それでも、あの弟達の事を一番に思わずに居られなかった・・・
考えるのはこれからの身の振り方・・・
取り敢えずはブラッドレイの言う通り、知らぬを装い弟達と共に行動するしかないだろう。
問題はその先だ・・・カノンとてこのまま黙ってみているなんて出来るわけも無い。
弟達を守り、かつホムンクルス側の目的を削ぐ方法を見つけなければと強く思った・・・
そう時も経たずしてラッシュバレーの駅に着くと、カノンは汽車を降りるやいなや、徐に自分の両頬をパンッと叩く。
そう・・・"しっかりしろ"と自分に言い聞かせるように・・・