鋼の錬金術師長編夢
□絶望
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「よかったよ姉さん、何事もなく戻ってきたから安心した・・・」
「すまなかったな・・・、でもアルこそ何もされなかったか?」
「大丈夫だよ、ソレよりも姉さんのことが気になって仕方なかった」
「それは私もだ、何よりアルに傷一つでもつけていたら八つ裂きにするところだったよ・・・」
「「「・・・・・・」」」
人質・・・という立場を他所に、暢気に会話を交わしているのはアルフォンスとカノンだ。
周囲の者も、もう諦めたかのように話に水を差すようなことはしなくなっていた。
ただ、グリードと別室から戻って来てからアルフォンスの腕に巻きついて放れないカノンに、拒むどころか嬉しそうにしているアルフォンス・・・
あまりに仲の良い姉弟具合に、姉弟というよりはベタベタの恋人同士のような雰囲気に居心地の悪い思いをしているのはマーテルだ。
けれど下手に邪魔をすれば、それこそ八つ裂きにされるのではとあえて黙っている。
そう、部屋を後にするカノンにより刻まれ、崩れ落ちた天井を思い出しながら・・・
それから間もなくして、何かに気づいたように声を上げたのはカノンだった。
「お・・・エドが来たみたいだな、エドの気配がする・・・」
「・・・何でそんな事分かるの?」
カノンの台詞に不思議そうな声を上げたのはアルフォンス。
扉の向こうから足音が聞こえるでもなく、声が聞こえるわけでもない。
そんな中、カノンがエドワードが来たと断定している事に驚いていた。
「錬丹術を使うのにどうしても物の気配というか・・・力の流れを読むことが必要でな。会得するまで大変だったよ」
「へぇ〜・・・どのくらいの範囲まで読めるの?」
「熟練者ならそこそこ離れていても感知できるらしいが、私だとまだ30m前後が限界だな。
それに気配を読もうと意識してなければ感知できないし・・・まだまだだな私も」
「それでも十分凄いよ!」
その時だ、会話を遮る様に勢いよく開かれた部屋の扉・・・
そこから姿を現したのは、カノンの言葉を肯定するかのようにグリードの手下二人に連れられたエドワードだった。
その表情は険しく、これ以上ないくらい不機嫌なのが見て取れる・・・