鋼の錬金術師長編夢
□誘拐
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いつまでもバイクの移動では目立ちすぎる。
カノンはゆったりと汽車に揺られていた・・・
本当なら一時間でも一日でも早くエドやアルと合流したい気持ちでいっぱいだったが、いかんせん港へ行ったのが軍に知られない事に越したことはない。
行きこそバイクを使ったがそれ以上は控えねばと、あえて時間のかかる汽車での移動だった。
ようやくの思いで南部・ダブリスへと着いたカノンは、息が切れるのも構わず、弟達に会いたい一心でイズミ・カーティスの自宅へと走ったのだ。
目的地である肉屋の看板が見えると、たまらずにこぼれる笑み。
しかしその笑顔が凍りつくまで、そう時間はかからなかった・・・
その扉へと手をかけようとする、しかしそのノブはカノンの手に触れることなく開かれ、中から顔を出したのはメイスンだった。
「メイスン!」
「カノンさんじゃないか!久しぶりですね!」
「ほんとご無沙汰してすまないな、ところでエドとアルはいるか?」
「・・・えっと・・・それが・・・」
何故そこで言葉が詰まるのかと、カノンは首をかしげた。
しかし自分の到着が思ったよりも遅くなってしまったのは事実、もしかしたら既にここを発ってしまったのかと頭をよぎるが、メイスンから聞かされたのは思いも寄らぬ言葉だった。
「アルフォンスくんがですね・・・誘拐され・・・ました」
「・・・・・は?」
予想の斜め上を行く事態に、カノンはおもわず素っ頓狂な声を上げてしまっていた。
困惑の色を隠せず頭に手を沿え、現状を把握しようとメイスンへと質問をぶつける・・・
「えーと・・・誘拐・・・、アルが?」
「はい・・・」
「エドも一緒なのか・・・・?」
「いえ、エドワードくんはなにやら査定を忘れたと慌てて南方司令部とかへ出かけてます」
「ってことはアル一人・・・居場所は・・・」
「あぁ、それなら掴んでます。今さっきイズミさんが挨拶に・・・出かけましたよ」
「わかった、場所を教えてくれ・・・私も行く!」
持っていた荷物を玄関口へと置き・・・息巻いた。
カノンがそれを知り黙っている訳がないのである。
メイスンもそれを分かっているのだろう、何を言うでもなく、カノンの荷物を預かりその背中を送り出した。