鋼の錬金術師長編夢
□対峙
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「で、こいつに蹴られたあとはもう覚えてない」
カノンの話を聞いた一同は、そのあまりに悲惨な話に憤りを覚えながらも、先へ進むべく話を纏めようとしていた。
カノンの過去にも携わり、尚且つ第五研究所でも関わってきたエンヴィーという人物・・・
魂のみの守護者や貴重なる人柱、ウロボロスの入れ墨に賢者の石の練成陣・・・
「ただの石の実験にしては謎が多いですな」
「これ以上調べようにも今や研究所はガレキの山だしな・・・」
『軍法会議所で犯罪リスト漁ってみるか・・・・』
「そうだな・・・」
「我輩はマルコー氏の下で石の研究に携わっていたと思われる者達を調べてみましょう」
大人三人が軍内で調べられる事に頭を巡らせていた、その時だ。
部屋の戸が鳴ったかと思えば、その開かれた扉から姿を現した人物・・・
その姿にカノン以外のメンバーはただただ驚き、驚愕の表情をみせていた。
「失礼するよ」
「「「「キング・ブラッドレイ大総統!!」」」」
「ああ静かに、そのままでよろしい」
そう言ってゆっくりとエドワードの元へ足を勧めるブラッドレイに声をかけたのは、他でもないカノンだった。
ただその呼び方と雰囲気に、ほかの者は驚くばかりで、エドワードとアルフォンスでさえもその様子を見ていることしか出来なかった。
『どうしたんだキング、なんでこんな所に?』
「やぁカノン、何故ってお見舞い。」
『見舞い?他ならぬ大総統が軍属の少年一人のためにか?』
「おかしいかね?あぁ勿論、久しぶりに君にも会いたかったからというのも否めんがね、カノン」
『相変わらずだなキング、だが・・・それだけではあるまい?賢者の石の事・・・だろう?』
カノンのその言葉に室内の空気が張り詰めた。
ブラッドレイも一瞬表情を固めたが、やはりもともとその話をするつもりできたのだろう。
ゆっくりと紡がれる言葉と絡み合う視線・・・
「・・・どこまで知った?場合によっては・・・・」
ブラッドレイとカノンの間には、緊迫した空気が流れていた・・・
その様子を目の当たりにしていたメンバーも息を呑むしかない。
しかし次の瞬間、その雰囲気は当のブラッドレイによって打ち砕かれた。