鋼の錬金術師長編夢
□真実
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やっとの思いで解読したマルコーの研究書。
そこから得た事実はとても重く、エドワードとアルフォンスの気力を奪い取っていた。
賢者の石の材料は生きた人間・・・それも石を1つ精製するのに複数の犠牲を必要とする。
そんな非人道的な行為が軍の機関で行われているなど許されないと、ロスとブロッシュは抗議の声を上げるが、エドワードによってその事実は口止めされてしまう。
エドワード達は部屋に閉じこもり食事もろくにとらずに塞ぎこんでしまっていた、ただカノンだけはエドワード達の隣の部屋で一人机に向かって何かを広げ真剣な表情で考え込んでいた。
普段なら身体のことを心配して食事の用意は怠らないのだが、今回にいたってはそこまで気を廻す余裕が無いらしかった。
(ふむ・・・封鎖された研究所に・・・刑務所・・・・か)
机に広げていたのはここ周辺の地図のようで、その地図上にはいくつかの赤い丸がつけられていた。
カノンは心の中で呟くと、きゅっと口を結び椅子を立つ。
トランクを手に取り中から1着の服を取り出しそれに着替えた。
青い上着に青いズボン、肩には階級を示す証がある。
普段は着ないがとても見慣れたその服は軍服で、何かあったときだけ着用している。
その格好のまま宿の階段を下りると、フロントでアームストロングとブロッシュ達が話しているのが聞こえてきた。
「何?エルリック兄弟は今日もまた部屋に閉じ籠もっていると?」
「ええ、今日は食事もまだのようです」
「むう・・・」
『アレックス、デニー、マリア』
突然名を呼ばれ、驚いたようにカノンの方を振り向いた。
カノンを視界に入れた3人は、名前を呼ばれたときよりもカノンのその服装に驚いた声を上げた。
「カノン殿!?どうなさいましたその格好は・・・」
『ちょっとヤボ用だ、これを着ていたほうが都合が良くてな』
「それにしてもわざわざ軍服とは・・・司令部に御用ですか?」
カノンは困ったような笑顔を向け肩をすくめ、その件に関してはそれ以上何も言わなかった。
『あぁそうだ、デニー、マリア!』
「「は、はい!」」
『私が戻るまで、あの二人を外に出さないで欲しいんだが・・・頼めるか?』
「分かりました、お帰りは何時頃で・・・?」
『分からん・・・かなり遅くなるかもしれん、万が一もあるし私がいない間はなるべく外に出て欲しく無くてな』
「了解しました、お任せください」
『ありがとう・・・では行って来るな』
「「「はっ!!」」」
踵を返しその場を後にするカノンを、アームストロング達は敬礼で見送った。