鋼の錬金術師長編夢
□過去
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「姉さんに貰ったんだよ、向こうの弟さんのだったんだって」
「へぇ・・・・あれ?」
「兄さん・・・?」
アルフォンスの腕にかかるそれをまじまじと見ていたエドワードが不思議そうな声を上げ、その声の意が分からずアルフォンスもまたエドワードに聞き返す。
「アル、この真ん中の石んとこ・・・なんか2重になってるぞ?」
「あ・・・・ほんとだ・・・」
よくみると、ダイヤ型の石の台座が2重になっている。
片方は蝶番のような物がついており、反対側は止め具のようになっている。
小さなものなのでアルフォンスも今まで気付かなかったようだ。
「これ、開きそうだね?」
「だな、開けてみろよアル」
「う、うん・・・でもいいのかな・・・」
「駄目だったら人にやんねぇだろ?いいんじゃねぇ?」
エドワードにそう言われ、アルフォンスはそっとその石に手をかけた。
少し力をいれて二重になっている台座の間に指を差し込めば、カチッと小さな音がして本のように開かれた。
開かれたそれにエドワードも興味津々でアルフォンスの手の中を覗き込む。
その台座の中から現れたのは、今の自分達と年の変わらない姿の女の子の姿だった。
艶やかな長い黒髪に黒い瞳、満面の笑顔で見慣れない服装をした少女。
服装こそ珍しいが、その少女は二人がとても見覚えのある顔だった。
「これ・・・」
「姉貴・・・だよな?」
そう、それは自分達がよく覚えている年の頃のカノンの写真だった。
まだ少し子供っぽさの残る15歳くらい、丁度自分達の傍から離れた頃のカノンだ。
「こうやって写真入れて持ってたなんて・・・姉さんの事大好きだったんだろうね・・・」
「どんな奴だったんだろうな・・・姉貴の弟・・・」
二人は同時に元の世界のカノンの弟を思う。
その表情と声色は優しくもあるが、すこし寂しそうな・・・そんな雰囲気だった。
「そういえば聞いた事なかったよね、姉さんの弟の話・・・」
「あぁ・・・俺達・・・さ・・・どっちか似てんのかな、性格とか・・・」
「兄さん・・・それ・・・」
「似たところがあるから・・・姉貴はオレ達の事・・・」
「っそんなことっ・・!」
アルフォンスがその言葉を否定するように声を上げたと同時、閉じていた扉が開かれ、数冊の本を持ったカノンが入ってきた。
カノンは半分椅子から腰が上がり声を上げるアルフォンスと、すこしうつ向き気味に暗い顔をするエドワードを交互に見て、不思議そうな声を上げる。