鋼の錬金術師長編夢
□過去
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やっとの事で目的の中央図書館までついたと思えば、第一分館であるその場所はもともとの建物の原型すら分からないほどに焼け落ちていた。
エドワード達が到着する前日に火災によって焼け落ちてしまったとの事で、エドワード、アルフォンス、カノンの3人は愕然とするが、図書館に勤務している司書の話で紹介されたシェスカという人物の家を尋ねた。
世界には驚く特技を持つ人もいるもので、分館にあったティム・マルコー著の膨大なまでの研究書を全て複写してみせたのだ。
カノンも大概に記憶力はいいほうだが、分厚い辞書数冊分にも及ぶものを一字一句間違えずにとはいかないだろう。
"ティム・マルコー著の料理研究所・今日の献立1000種"そのタイトルには一瞬戸惑いを隠せないメンバーだったが、錬金術の研究所と言うものは安易に他人に読まれてしまわないよう暗号化されているものだ。
現にエドワードも旅行記風に記された研究手帳を持っているし、カノンも架空小説のように書き綴ったデータをSDカードに入れている。
焔の錬金術師ロイ・マスタングは全て女性の名前で記されているとか・・・
複写に5日かかったとはいえ、マルコーの研究所を手にしたエドワード達はそれをうけとり、大喜びで図書館での解読作業に取り掛かった。
図書館内の個室を借り、3人は缶詰状態。
護衛であるブロッシュとロスは邪魔にならないよう室外で警護にあたっていた。
静かな空間で、室内から聞こえてくる本のページをめくる音やペンを走らすカリカリという音が響く。
しかし思った以上に解読は難しく、気がつけば1週間が過ぎていた。
「なんなんだこのクソ難解な暗号は・・・・・」
「兄さん・・・これマルコーさんに直接訊いた方がいいんじゃ・・・」
「いや!これは"これしきの物が解けない者に賢者の石の真実を知る資格無し"というマルコーさんの挑戦と見た!なんとしても自力で解く!!」
『その意気だエド、どちらにしろ訊いて教えてくれるのならこないだの時に教えてくれてるさ。さて、私はちょっと下で資料を探してくるよ』
「あ、姉貴。それならこれ戻してきてくんね?」
『あぁいいよ、行って来るな』
エドから使い終えた資料を数冊受け取り、カノンは扉の外へと出て行った。
室内に残されたエドワードとアルフォンスは、流石に疲れの色もあるようでしばし机に突っ伏していた。
しかしそのままでいても仕方がないと、アルフォンスが目の前の研究書の1枚に手を伸ばした時だ。
チャリッと金属同士がぶつかり合う音が響く。
その音に反応するようにエドワードが思い出したようにアルフォンスに話しかけた。
「なぁアル」
「ん?何?兄さん」
「それどうした・・・?」
「え?あぁ・・・」
エドワードが指差したもの、それはリゼンブールでの夜、カノンが約束の証だとアルフォンスにくれた物だった。
その存在に気付いたのは大分前だったが、聞こうと思ってはいたが分館の火事などで頭から抜け落ちていたようだ。
別に隠す必要もないので、アルフォンスはそのリングブレスレットのかけられた腕をエドワードの目前へと差し出した。