鋼の錬金術師長編夢
□帰郷
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「アル!降りるぞ!」
「え?もう?」
『リゼンブールまでまだ大分あるだろ?』
「って姉貴ここにいたのかよ!」
『アルとゆっくり話したかったんでな、まぁ降りるなら少佐にアルを頼もう』
アームストロングに担がれ汽車を降りたアルとカノンは、途中下車の目的を聞き納得の表情をみせた。
少佐の似顔絵のおかげで思いのほか目的の人物は見つかったが、軍をひどく警戒している様子で、その人物の家であろう扉を空けた瞬間、エドワードに鉛球が飛んできた。
「何しに来た!!」
「落ち着いてくださいドクター」
「私を連れ戻しに来たのか!?」
「もうあそこには戻りたくない!お願いだ勘弁してくれ!」
「違います、話を聞いてください」
「じゃあ口封じに殺しに来たか!?」
「まずはその銃をおろし・・・」
「騙されんぞ!!」
「おちつ・・・『落ち着けと言っているのが分かりませんか?』・・・」
二人の押し問答に痺れを切らしたのはカノンで、アルの木箱を少佐が振りかぶった瞬間、普段より低い声で言い放ち、行動にでた。
手刀でマルコーの持つ銃を叩き落し、その腕を掴み上げた。
『危害を加えるつもりはない、落ち着いて話を聞いていただけるかな?ドクター』
表情は笑っているが、目が笑っていない。
加えて声のトーンから伝わるイライラした様子にその場の全員が固まった。
中に通されテーブルを囲んで腰を下ろす。
マルコーは過去を振り返りながら苦痛の表情で語り始めた。
上からの命令であるものの研究をしていた事。
そしてその研究の成果が東部の内乱で虐殺の道具に使われた事。
そしてそのせめてもの償いとして現在の場所で医者をしている事・・・
「いったい貴方は何を研究し何を盗み出して逃げたのですか・・・」
「賢者の石を作っていた、私が持ち出したのはその研究資料と石だ」
その台詞に全員が息を飲む。
エドワードも興奮気味に身を乗り出さずに入られなかった。
「石を持っているのか!?」
「ああ、ここにある」
そう言って奥の戸棚から出された小さな瓶。
中のものは赤く、濃度のありそうな液体が揺れていた。
「石って・・・これ液体じゃ・・・」
エドワードのその台詞に、マルコーはおもむろに瓶の栓を抜きテーブルへと瓶の中身を傾けた。
それに驚きの声を上げるエドワードだが、その液体はトロトロとテーブルの上に落ちて、丸いスライム状に形をとどめた。