鋼の錬金術師長編夢
□守護
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「・・・・ん・・・」
窓から差し込む日の光で目を覚ますと、首にかかる重さにエドワードは首をかしげた。
背中にも柔らかい感触と共に伝わる暖かさ。
寝ぼけた頭でその重さの正体に思考をめぐらせるが、未だはっきり覚めていない脳が邪魔をする。
手をのそのそと首に回るものに伸ばすと、そのすべらかな感触に、やっと思い起こす昨日のこと。
「そっか・・・サンキュ・・・姉貴・・・」
夢にうなされていた自分を心配し、抱きしめてくれた姉のカノン。
そのままずっとついててくれたのだと、エドワードは胸が暖かくなるのを感じていた。
耳に届く規則的な吐息に、カノンはまだ夢の中だという事を知らせてくれる。
なんだか心地よくて、暫くそのまままどろんでいると、不意に部屋の扉が開かれた。
「ごめん兄さん!姉さん・・・しらな・・・・」
「アッ・・・アル!!!」
突然の弟の来室に、途端に恥ずかしくなり飛び起きた。
「兄さん・・・どういうこと・・・?」
「なっ・・・・ななななななな何が!!」
15にもなって姉と一緒に寝ているなど普通に考えれば少々恥ずかしい。
理由はあったがそんなことをアルフォンスが知るはずはなく、なんと言えば良いか考えているとアルフォンスから降ってきたのは予想とは全く違った台詞だった。
「兄さん・・・まさかこんなに早く姉さんを取られちゃうとは思わなかったよ・・・」
「・・・・・は?」
「・・・・ちがうの?」
「・・・・何の話だ」
「いや、だって・・・この状況で他に言う事ある・・・?」
そういってベッドで眠るカノンを指差すアルフォンス。
一体なんだと言うふうに、いぶかしげな表情でそれを振り返ると、ほんのり赤かった顔が真っ赤になるのを通り越して青くなった。
そこにあったのは上半身裸で、かろうじて下着だけはいて眠るカノンの姿だった。
「おっおおおおおおオレは何もしてないぞアル!!!」
「流石に説得力無いよ兄さん・・・」
「誤解だあぁぁぁぁぁああ!!!!」
『・・・・朝から何の騒ぎだ・・・』
流石のエドワードの叫び声に目を覚ましたカノンがゆっくりと起き上がる。
今まで背を向けていたカノンが2人に向き直ると、エドワードは勢いよくそっぽを向いてブツブツ言い始め、流石のアルフォンスも慌て始めた。
「おおおオレは何も見てない・・・ミテナイミテナイミテナイ・・・・」
「姉さん!なんてかっこしてるの!」
『ん・・・あぁすまん・・・昨日シャワーを浴びてそのままだった・・・』
「早く部屋に戻って服を着る!あと軍から電話!!」
『何・・・わかったすぐ出る』
軍から電話という台詞に表情を引き締めカノンは急ぎ部屋を後にした。
残されたエドワードはどっと疲れたようにベッドに突っ伏し、アルフォンスは大きな溜息をつきその場に立ち尽くす。
「・・・アル・・・姉貴の羞恥心の無さを何とかしてくれ・・・」
「あれはもう・・・どうにもならないと思うよ兄さん・・・」
軍からの電話を受けたカノンは顔色を変え、早々に電話を切ると自室に駆け込んだ。
手早く着替えを済ませるとキッチンへ行きコップ一杯の牛乳を飲み干す、今朝はこれが彼女の朝食になってしまった。
いつもならこれからエドワードの朝食を用意するところだが、事件だと呼び出しがかかってしまい早急に行かなければならない。
飲み干したグラスを水桶に沈め、エドワードの部屋へ足を運んだ。
『エド、アル!呼び出しがかかった。すまんが朝食適当に済ませてくれるか?』
「大丈夫だよ姉さん、いってらっしゃい」
「・・・なんかあったのか?」
『わからん、事件だから至急との事だ、行ってくる!』
二人の頬にキスを落とし、カノンは家を後にした。