鋼の錬金術師長編夢
□雷雨
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「き・・・消えてしまいたい・・・・」
「・・・・覚えてるんだ・・・」
朝起きて開口一番の会話がこれだった。
エドワードはベッドの上でうずくまり頭から布団をかぶっている。
そんな兄の様子をあきれたようにアルフォンスが眺めていた。
「消えたい・・・死にたい・・・生きて行けない・・・」
「いいからいい加減起きなよ兄さん・・・」
昨日の夕食時に飲んでしまったお酒の所為で晒した痴態にショックが酷かったようだ。
だが姉の薬のおかげで二日酔いなどはさっぱりない。
「何・・・兄さんどのくらい覚えてるの?」
「あ・・・余すことなく全部・・・」
その兄の台詞にアルフォンスは悪戯心をくすぐられたのか、わざと兄に精神的ダメージを与える言葉を選んでいた。
「へー、って事は・・・・姉さんに口移しで薬のまされたのも」
「いうなあぁぁぁ!!」」
「幼児言葉でベタベタに姉さんに甘えてたのも」
「やめろおぉぉぉ!!」
「姉さんに抱きついて結婚するって言ったのも」
「勘弁してください・・・」
「全部覚えてるんだ」
「・・・・死にたい・・・」
言い終えた後のエドワードの姿はもはや生気が抜けたようだった。
「にしても兄さんが結婚するとかさらっと言うなんて流石にビックリしたけどね」
「あっあぁぁぁあれはだな!小さい頃にお前と言ってたやつがつい出ちまっただけで!!」
「ふ〜ん・・・(自覚がないのか誤魔化してるだけなのか・・・どっちかな兄さん・・・)」
「あっ・・・あたりまえだろ!?大体自分の姉貴だぞ!?そんな風に見てるわけっ・・・!」
「そうなの?(これは自覚してないな・・・)」
「・・・っ、なんでお前そんな平然としてんだよ・・・」
「だって言ったのは兄さんだし?(ボクは姉さんの事そういう意味で好きなの自覚してるし)」
「そっ・・・それはそうだけど・・・っ!」
「姉さんどう思っただろうねー(っていうか兄さんが純情すぎるんだよ)」
「おまえそゆ事言うなよ・・・」
「はは、ごめんごめん」
『エド朝食できたぞ』
「うわあぁぁぁぁあ!!!」
「あ、おはよう姉さん」
前触れもなく部屋の戸が開き、カノンが顔を出した。
今当に話の中心だった人物が目の前に現れ、エドワードは思わず叫び声を上げる。
うってかわってアルフォンスはいつも道理の口調で挨拶を返していた。
カノンは突然の叫び声に何事かと首をかしげ、布団に転がるエドワードの元へ足を進めた。
『どうしたエド・・・』
「な・・・なんでもないです・・・」