ソウルイーター短編夢

□子供になっちゃった15題(01〜05)
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家の前に立つと、ちょうどロビーで話しているのか、リズとパティの声が聞こえた。

忘れないうちに椿からの預かり物を渡してしまおうと、小瓶をポケットから取り出し扉をあけた。

案の定そこに見えたのはリズとパティで、俺は声をかけた。


「ただいま。リズ、椿から・・・・」

「キ・・・キッド!い、今ちょっと・・・!」

「わ、だめだよ猫〜!!」

「は・・・?ね・・・・?」


聞き返そうとしたのもつかの間、次の瞬間目の前は白いふわふわしたもので覆われた。

パティが抱いていた物が俺の方に飛びついてきて持っていた小瓶が弾かれ宙を舞う。

拍子に瓶の栓が抜け、中身の液体が降り注ぎ、空になった瓶は乾いた音を立てて砕け散った。


元凶の猫だと思わしき動物は、人の頭を踏み台にして、我関せずと未だ開きっぱなしの玄関から出て行った。

呆然としていると、気まずそうに沈黙をやぶったのはリズで・・・


「あ・・・あの・・・キッド・・・?その悪かったな・・・
 窓開けたら飛び込んできてさ・・・帰ってくる前に追い出そうと思ったんだけど・・・」

「猫さんなかなか捕まらなくって追いかけっこしてたんだよ〜!」

「いや・・・まぁそれは仕方ないから構わんが・・・」


猫の事よりやはり気になったのは香水で、無残にも砕けた瓶の破片を見つめていた。


「それ・・・大事なもんだったのか・・・?ほんとごめん・・・」

「というよりはお前に渡してくれと頼まれた物だったんだが・・・
 椿には悪いことをしてしまったな・・・」

「椿から?」

「あぁ、お前が欲しがっていた香水らしい、折角日本から買ってきてくれたようだったんだがな・・・」

「って、それってこないだ椿と話してたあれの事か〜!?うわ〜、最悪〜!!」


それを聞いたとたん今度はリズの方がショックで項垂れてしまったようだ。


「とりあえず椿に礼だけは言っておいてくれ、台無しにしてしまったことは俺も一緒に謝るから。」

「あ、あぁ分かった・・・」


よほど残念だったのか、リズは項垂れながらヨロヨロと壁に手を着きながら自室へと向かう。

パティも「キッドくんごみんに〜」とか言いながらリズの後を追っていった。


俺は静かになった玄関で1人ため息をつき、砕けてしまった破片を片付けて風呂場へ向かった。

頭から瓶いっぱいの香水を浴びてしまったのだ、早くシャワーを浴びてスッキリしたかった。

そしてふと、違和感を感じる。


「・・・・香水にしては・・・えらく独特な香りだな・・・」


花の香りでもなくフルーツでもなく、どちらかと言えばお酒に近いそんな感じだった。

シャワーで浴びた香水を落とし、新しい服に着替える。

しかし、何時になくひどい眠気が襲ってきた。

普段ならまだ全然眠くなる時間ではない。

歩く足取りすらおぼつかなくなる程の睡魔、ようやくの思いでベッドまで辿りついたが、そのまま倒れこみ、俺は意識を手放した。
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