ソウルイーター短編夢
□子供になっちゃった15題(01〜05)
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1:発端は些細な手違い
「あ、キッドくん!」
放課後、帰宅しようと図書室から出たところを不意に呼び止められた。
声のした方を振り向くとそこに立っていたのは魔武器の女の子。
「椿ではないか、どうした?」
「呼び止めてごめんなさい、あのね、これをリズちゃんに渡してもらえないかしら。」
渡されたのはガラスの小さな小瓶。
中には何か透明な液体が入っているようだ。
「あぁ、それは構わないが、これは?」
「それ、日本に帰ったときに買ってきた香水なんです。
リズちゃんが前に欲しいって言ってたのをちょうど見かけたから。」
「そうだったのか、わざわざすまないな。
あとで間違いなく、リズに渡しておくよ。」
「はい、お願いしますね。じゃあキッドくんまた。」
「あぁ、またな。」
椿が見えなくなるのを確認して、俺も帰ろうときびすを返すと何かにぶつかり、衝撃で尻餅をついてしまった。
「っつ・・・・」
「すまない、大丈夫かい?」
上から降ってきた声に顔を上げると、そこにいたのはシュタイン博士だった。
「博士・・・大丈夫です、ご迷惑を・・・」
そこまで言ってふとあたりを見ると、同じく衝撃で博士が落としたであろう書類やメスや薬瓶らしきものが散らばっていた。
「す、すみません!」
慌てて周りに落ちているものを拾い集め、博士に手渡した。
書類が汚れてしまっていないか、メスの刃が欠けてしまっていないか、瓶が破損してはいないか不安がぐるぐると頭の中をかけるめぐる。
そんな俺の様子を察してか、ふと頭に博士の手が触れた。
「そんなに気にしなくても、何も破損してませんし大丈夫ですよ。」
「あ、ありがとうございます・・・」
じゃあね、というように俺の頭をぽんぽんっと撫でると博士は行ってしまった。
何も言わないところを見ると本当に大丈夫なのだろうと俺も安堵したが、ふと何かが足りないことに気づく。
「なんだ・・・なにがたりない・・・・?」
図書館から借りた本は確かに持っている。
そして思い出したのは椿。
「っ・・・!預かった小瓶が・・・ない・・・」
焦って辺りを見回すと、廊下の隅のほうに夕日を反射して光るものが見えた。
近づいて手を伸ばし物を確認してみると、それはやはり透明な液体が入った小瓶で、
割れていないことと見つけられたことに胸をなでおろした。
「さて・・・こんどこそ帰るか・・・」
思わず一つため息を漏らし、空がオレンジから闇色に変わるのを眺めつつ、死刑台邸への岐路を辿った。